【4月13日 AFP】米予算案をめぐり民主党と共和党が合意した内容に抗議するデモに参加して身柄を拘束された米首都ワシントンD.C.(Washington D.C.)のビンセント・グレイ(Vincent Gray)市長が12日、米テレビCNNに出演し、「ワシントンD.C.は政治的取引の駒にされた」などと述べ、改めて合意を批判した。

 民主・共和両党は交渉期限の9日午前零時(日本時間同日午後1時)の直前に合意に達し、政府機能の停止はぎりぎりで回避された。しかし、この合意内容に納得できないグレイ市長は11日、市職員らとともに抗議デモに参加していたところ、警察に身柄を拘束された。

 グレイ市長が最も問題視するのは、市の予算から低所得者層の女性の中絶費用を出すことを禁じる条項が含まれたことだ。

 12日朝に釈放されたグレイ市長はCNNのインタビューで、「(議会は)中絶の制限をわれわれに課した。だが中絶に関する決定は、当事者の女性と医師にゆだねるべきだ」と主張するとともに、「率直に言って、地方税の使い道を自ら決められない自治体は米国でここだけだ」と述べ、ワシントンD.C.は「予算をめぐる政治ゲームの駒にされた」と不快感をあらわにした。

 さらにグレイ市長は、今回の合意は、米国の首都でありながら連邦議会に議員を送っていないというワシントンD.C.の特殊な性格につけこんだものだと厳しく批判した。

「連邦議会には上院にも下院にも、ワシントンD.C.を代表する議員はいない。率直に言って、そこにつけこんで議員たちは、自分の地元には絶対に認めないようなことをワシントンD.C.には平気でやるんだ。今回の合意がいい例だ」(グレイ市長)

■「国のかたち」をめぐる論戦、大統領選にも影響

 ようやく予算案をめぐる激戦を乗り越えたばかりのオバマ政権だが、まだ、先には連邦政府の債務限度の問題や2012年度予算編成をめぐる攻防が待ち受けている。

 バラク・オバマ(Barack Obama)大統領は13日、膨らむ一方の財政赤字の削減案を発表する予定だ。与野党間で激しい議論になるのは必死で、再選に向けたオバマ大統領の選挙運動に深い影響を与える可能性がある。

 共和党との論戦の核心となるのは、民主・共和党間の最大の相違点である、国民の生活に政府がどこまで関与するかという、政府の規模の問題だ。

 共和党は前週までに、今後10年間で政府支出を6兆ドル(約500兆円)削減する内容の独自の歳出案を提示して、長期的な予算をめぐる議論でオバマ大統領に圧力をかけた。

 共和党は高齢者・障害者向け公的保険(メディケア)、低所得者層向け保険(メディケイド)での支出削減を主張するのに対し、民主党は富裕層への増税で財政建て直しを図りたい構えだ。(c)AFP