【3月22日 AFP】南米歴訪中のバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は21日、南米各国の指導者らに、米国との対等な関係を構築する新たな時代の幕開けを呼びかけ、南米と米国とのイデオロギー対立は過去の遺物になったと宣言した。

 大統領就任後初めての南米歴訪となるオバマ大統領は、米経済の立て直しを目指して南米に貿易促進を働きかける一方で、米国と南米は共通の価値観でつながっていると語った。

「今日の南北アメリカ大陸には、高位のパートナーも低位のパートナーもない。平等なパートナーだけがあるのだ」と、オバマ大統領は、チリの首都サンティアゴ(Santiago)でセバスティアン・ピニェラ(Sebastian Pinera)チリ大統領との共同会見で語った。

 一方で、オバマ大統領の発言には、南米における障害となっているキューバやベネズエラのウゴ・チャベス(Hugo Chavez)大統領に対する非難も見え隠れしており、オバマ大統領は「自らの権力を正当化して反対者たちを黙らせるために破たんしたイデオロギーに固執する指導者たち」を非難した。

 だがブラジル訪問時と同様、オバマ氏のメッセージは、米経済再建に向けた米国の輸出拡大の企てに主要な目的が向けられた。

■南米との関係回復めざす

 南米との関係は、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)前大統領時代にはほとんど放置されていた。南米歴訪は22日で幕を下ろすが、米政府はこの歴訪を南米に対する影響力を取り戻すための機会ととらえている。

 米国は南米の主要パートナーであるパナマ、コロンビアと自由貿易協定交渉を進めており、オバマ大統領による南米へのアピール作戦で、急成長する南米市場に米国企業が参入する機会が生まれる可能性がある。

 また、チリと米国は18日、日本の原発事故を受けて環境団体などが強く反対するなか、原子力協定に署名している。

 一方でリビア問題はオバマ大統領の南米歴訪に若干の影を投げかけた面もある。リビアの最高指導者ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐の追放を目指した空爆は南米各国で賛否が入り交じっている。コロンビアやペルー、パナマ、チリは空爆に支持を表明する一方、ベネズエラやボリビア、エクアドル、ウルグアイ、パラグアイ、ニカラグアは空爆を非難している。

■スラム跡地訪問、晩さん会に参加

 オバマ大統領は20日、訪問先のブラジル・リオデジャネイロ(Rio de Janeiro)で演説し、独裁政権が活発な民主主義に変化することのできる証左としてブラジルを挙げた。オバマ大統領は、21日にもチリで同様のコメントを行った。

 2014年にサッカーW杯、2016年に五輪を開催するブラジルでは悪名高いスラム街の撤去が続いており、オバマ大統領も、数年前には危険地帯だった貧民街に招待された。

 オバマ大統領の南米歴訪には、ミシェル(Michelle Obama)夫人や娘のマリア(Malia)さんとサーシャ(Sasha)さんも同行。南米で1990年に民主主義政権が復活して以来初の右派政権を南米で樹立した富豪実業家のピニェラ大統領は、21日夜にオバマ一家を公式晩さん会に招待した。

 オバマ大統領は22日、歴訪最後の訪問先であるエルサルバドルへ向かう。(c)AFP/Tangi Quemener