【2月9日 AFP】フェースブック(Facebook)やユーチューブ(YouTube)など多数のサイトへのアクセスを政府が遮断しているイランで、規制を強化する検閲当局と、海賊版などで当局の目をかいくぐろうとするネットユーザーたちのいたちごっこが続いている。

 イラン政府は前月、初のサイバー警察を発足させ、ネット監視を一層、強めた。

 イラン当局は「不道徳で退廃的」と判断したコンテンツへのアクセスを遮断している。1月末には、ポルノサイトの運営者2人に死刑判決が下された。ポルノ画像だけでなく、イラン政府に批判的な報道サイトも「不道徳」とみなされる。

 ネットユーザーの1人、ミラドさん(仮名)は、チュニジアでの政変やヨルダン、エジプトでの反政府デモ以降、アクセス不能となったサイトが明らかに増えた、と話す。複数の有料サイトなどを経由して、こうした情報へアクセスすることもできるが、非常に時間がかかるという。

 厳しいネット規制が敷かれているにも関わらず、イランのネット人口は3200万人で、全人口7400万人の約半数に相当する。

 当局に禁止されることが多い米国映画のDVDやPCゲーム、海賊版ソフトなどの市場も活発だ。イランには著作権法がないことから、米国の新作映画の海賊版も、公開から数日後には低価格で入手できるのだ。インターネット小売大手アマゾン・ドットコム(Amazon.com)で2300ドル(約2万9000円)前後するソフトの海賊版も、イランではわずか5ドル(約400円)しかしない。「ぼくたちは、中東で最大の海賊版購入者だ」とミラドさんはいう。

 だが、イランのネットユーザーたちにとって最大の難関は、当局の監視網をくぐり抜けることだ。ブロックを迂回するためにネットユーザーたちは、さまざま技術を当時、有料無料のソリューションを駆使してきた。 

 またアクセススピードの遅さや、ひんぱんなネットダウンもイランのユーザーたちの悩みの種だ。

 フェースブックやユーチューブの熱烈な支持者だという27歳の女性は、イランでは最新情勢へのアクセスを保ち続けることが難しいと話す。「検閲との戦いは、イラン国内でのインターネット体験の一部として刻み込まれてしまっている」

 イラン当局は常にあらん限りの手を尽くし、ネットアクセスに立ちはだかる壁は日々、高くなるばかりだという。(c)AFP