【1月26日 AFP】26日の中国国営メディアによると、温家宝(Wen Jiabao)首相は24日、当局に対する陳情を受け付ける北京(Beijing)市の国家信訪局(State Bureau for Letters and Calls)を訪れ、中華人民共和国が建国された1949年以来、中国首相として初めて陳情者と面談した。

 温首相は陳情に訪れた人びとから、賃金未払いへの救済を求める声や、政府による土地の接収や住宅の強制撤去に対する訴えを聞き、共産党の一党独裁下で人びとが募らせている怒りに耳を傾けた。その姿は大きく報じられた。

 しかし、国際人権監視団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights WatchHRW)」は、不満をもつ市民と温首相の対話は、中国全土で高まる国民の抗議行動を抑えるための政治ショーに過ぎないと断じた。

 中国では皇帝時代にさかのぼる制度に基づき、中央政府や各省の自治体政府に、不法な土地摂取や警官の不祥事といった不正行為や問題の解決を求めて申し立てができる。毎年何百万人がそうした申し立てを行うが、役人は関心を示さないという批判も少なくない。申し立てを行ったがために、投獄されたという報告さえある。

 ヒューマン・ライツ・ウオッチは、温首相の今回の訪問は慎重に計画されたもので、「中国共産党の指導層は国民のことを気にかけているというメッセージを、国営メディアを使って広く宣伝しようという意図がある」との見方を示した。

 また「実際には制度は崩壊し、陳情者たちは、彼らを陳情に駆り立てる原因となった者たちよりもずっと大きな罰を受けることも多い」とした上で、毎年数百万人も陳情を行うという事実は「中国に本物の法の支配が不在であることの証明」と指摘した。(c)AFP/Susan Stumme