【1月25日 AFP】ソマリアの海賊に乗っ取られた韓国船舶の救出作戦の成功について、韓国海軍当局者は24日、綿密な作戦とハイテク機器が役立ったと振り返った。

 海軍部隊は21日未明、アラビア海(Arabian Sea)で15日にソマリアの海賊に乗っ取られた化学物質運搬船サムホジュエリー(Samho Jewelry)号(1万1500トン)を急襲し、乗組員21人(韓国人8人、インドネシア人2人、ミャンマー人11人)全員を救出した。

 作戦では海賊8人が死亡し、5人が拘束されたが、韓国の駆逐艦「崔瑩」(チェヨン、Choi Young)から送り出された海軍特殊部隊の死者はゼロだった。サムホジュエリーの船長は腹部に海賊の撃った弾を受けて負傷したが、命に別状はない。韓国国防省報道官は今回の作戦を「ハイテクによる勝利」と評した。

■綿密なハイテク作戦

 韓国海軍によると、軍司令部は、特殊部隊隊員15人が夜明け前にサムホジュエリー号に乗り込む様子を、隊員のヘルメットと銃に取り付けられた遠隔カメラシステムを通じて逐次監視することができたという。韓国海軍広報は、AFPの取材に「映像が届き、ソウル(Seoul)の軍幹部や韓国各地の司令センターで、船で起きていることをリアルタイムで監視することができた」と語った。

 また、韓国紙・中央日報(JoongAng Ilbo)によると、海軍はレーダーと電波を妨害して、海賊らが母艦と通信するのを防いだ。また、電波とレーダーを妨害したことで、海賊らは高速船で接近する海軍のボートやヘリコプターにも気づかなかったという。国防当局高官は妨害電波などの使用については事実確認を拒否した。

 さらに軍は、サムホジュエリー号と類似する船の写真を撮影して崔瑩に送り、特殊部隊の船内制圧に役立てた。また作戦開始前に駆逐艦とヘリコプターで攻撃のそぶりを繰り返し、「海賊を疲弊させ、本物の攻撃に備えることができないようにした」(崔瑩の艦長)という。

 米国海軍もP-3C哨戒機を出動させ、船内で海賊が潜んでいる場所の特定に協力した。

■士気上がる韓国軍と国民

 韓国軍は、前年11月の北朝鮮による延坪(Yeonpyeong)島砲撃の対応が弱腰だったとして厳しく非難されていたが、救出作戦の成功で士気は上がっている。作戦を承認した李明博(イ・ミョンバク、Lee Myung-Bak)大統領には、一般国民だけでなく野党からも称賛の声が上がっている。 

 マレーシアも前週、アデン湾(Gulf of Aden)で乗っ取られたオイルタンカーで同様の救出作戦を実施し、乗組員23人を救出し、ソマリアの海賊7人を拘束している。(c)AFP/Jung Ha-Won

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