【1月18日 AFP】米中関係に新しい動きがみられると同時に軍事的な緊張も高まっている中、中国の胡錦濤(Hu Jintao)国家主席が18~21日の日程で訪米する。金融危機からの経済の回復が遅れる米国と、さまざまな国際的パワーを獲得しつつある中国の首脳が直接、対話を交わす。

 バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領と胡主席はともに国内に政治問題を抱えており、そのことが世界トップの米国と急速に力をつけている中国との間に緊張をもたらしかねない。

 米国は金融危機からの回復の遅れに脅かされている。一方で、経済成長と軍事的拡張により新たな課題が浮き彫りになった中国でも、権力の移行が始まりつつある。

 中国は2013年までに指導部の交代が完了する予定で、胡主席の訪米も今回で最後となる可能性が高い。米政府はこの機会に、次世代の対中関係を模索したい考えだ。

■米中の対立関係

 米政府は、中国人民元の為替レートが米国の景気回復を妨げていると批判してきた。一方、中国政府は、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ(Dalai Lama)14世のワシントンD.C.(Washington D.C.)訪問や、米国の台湾への武器売却を強く非難している。北朝鮮問題も米中関係にひびを入れている。

 軍事的にも米中は緊張関係にある。中国は南シナ海(South China Sea)での領有権問題で強硬姿勢を誇示し、米国もアジア地域における外交的影響力の回復を目指しているからだ。

 とはいえ、米中双方とも対立の危機化は避けたいだろう。

■緊張緩和の兆しも

 中国は人民元の切り上げを緩やかに認める方針を最近になって示し、米政府も中国への批判を弱め、中国のインフレが米国の競争力向上に役立っていると表明している。

 また両国は、中国経済がどれだけ急速に成長しても、輸出先としての米国市場と米国で生まれるイノベーションは中国にとって不可欠であるとの認識を共有している。米国の失業率が10%近くで推移する中、オバマ政権も中国との安定した関係が不可欠だと認識している。

 トム・ドニロン(Tom Donilon)米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は「米国にとって胡錦涛政権は、中国を代表する非常に率直な対話の相手だ」と語る。

 ドニロン補佐官は「もちろん議論はある。中国では特にブログや新聞などで、中国の台頭や対米関係についての議論がある。これらの議論の内容を把握しておくことはとても重要なことだ」と述べた上で、中国の対米政策は概して一貫していると語り、前年に中国共産党の機関紙、人民日報(People's Daily)に掲載された戴秉国(Dai Bingguo)国務委員の論説を取り上げた。

「(論説は)経済発展と安定を追求しているうちは対決姿勢を避けるという、中国の最高指導者だった故鄧小平(Deng Xiaoping)氏の開放路線を再確認する内容だった」とドニロン補佐官は述べ、「この論説は、中国の外交政策、とりわけ対米政策に対する中国指導部の現時点における姿勢を示していると読むことができる」と語った。(c)AFP/Stephen Collinson