【12月22日 AFP】米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)は20日、米国土安全保障省(Department of Homeland SecurityDHS)が米国民に関する情報を収集した膨大なデータベースネットワークを構築していると報じた。

 同紙は多数の関係者へのインタビューや約1000点の文書の調査を行った。これによると、このデータベースは米国土安全保障省が各州政府、警察、軍関係者を総動員して米国人および国内在住者に関する情報を集めたもの。対象となった人物の多くが、逮捕歴や犯罪歴はない市民だという。

 米国では治安維持対策が市民権を侵害しないよう法的規制を設けてきた。このデータベースは、市民のプライバシーや自由権保護に関する問題を提起しかねないものだ。

■同時多発テロ後に多額の予算

 ワシントン・ポスト紙の報道について、国土安全保障省からのコメントは出ていないが、2001年の9.11米同時多発テロ以降、米政府はこのデータベースの構築に数十億ドル(数千億円)規模の予算を投入してきた。

 データベース構築の背景には、近年、米本土において米国市民や在住者によるテロ未遂事件が相次ぎ、テロへの懸念が高まっていることがある。

 このデータベースの情報は本来、米連邦捜査局(Federal Bureau of InvestigationFBI)のために集められたものだが、その有効性は不明で、人権団体からは市民権への影響を懸念する声があがっている。

 このネットワークには連邦、州、地方自治体各レベルの計4058の組織・団体が含まれている。このうち935団体は9.11米同時多発テロ以降あるいはごく最近に、テロ対策のために作られたものだ。

 FBIは「疑わしい行為」が認められる米国市民、数万人の個人情報データベースを保有している。地方自治体や州警察など890の組織も2年前にこのデータベースへの情報提供を始めた。これまでに7197件の情報が提供されたが、現在までにこの情報をもとに有罪となった例はない。
 
■全米の不審者情報収集システム構築へ

 米政府が現在計画している全米不審行為通報計画(Nationwide Suspicious Activity Reporting InitiativeSAR)により、将来的に国土安全保障省のデータベースには米国の全ての警察機関から送られた情報が集められるだろう。

 ワシントン・ポストの調査で、イラクやアフガニスタンで使うために開発された携帯型指紋スキャナーや、バイオメトリック情報機器、無人偵察機などの技術や手法を、米捜査機関がカナダやメキシコとの国境地帯などで導入していることも明らかになった。

 この膨大な諜報データベース構築の費用の算出は容易ではないが、2003年以降、国土安全保障省から各州・自治体に対し、テロ対策費用として計310億ドル(約2兆6000億円)、2010年だけで38億ドル(約3200億円)予算がつぎ込まれている。(c)AFP