【12月21日 AFP】インドで、2008年に当時の通信相が第2世代(2G)携帯電話の周波数帯の新規割り当てを不当な低価格で行っていたとの疑惑をめぐり、マンモハン・シン(Manmohan Singh)首相(78)が適切に介入しなかったとして、野党が首相への批判を強めている。

 この疑惑に関して、政府の監査委員会は約400億ドル(約3兆3000万円)の歳入が失われた可能性があると指摘している。当時、通信・情報技術相だったアンディムス・.ラジャ(Andimuthu Raja)氏は疑惑を受けて辞任に追い込まれたが、不正への関与は否定している。

 低価格で周波数帯割り当てを受けた企業からシン首相が個人的な利益を得ていた疑いは出ていない。だが、連立政権の基盤を強化するためにはラジャ氏の地域政党、ドラビダ進歩同盟(DMK)の協力が必要との政治的な動機から、シン首相がラジャ氏の行為を黙認したと批判されている。

 汚職の激しいインド政界にあって、シーク教徒のシン首相は清廉潔白な人柄で知られる。20日開かれた国民会議派の戦略会議でシン首相は、潔白を証明するために議会の会計委員会に出席し証言する意向を委員長に書簡で伝えると発言した。

 周波数帯割り当て疑惑をめぐり野党側は超党派の調査委員会設置を求め、冬期の議会はほぼ全面的にストップした。だが、シン首相は一貫して野党の主張を退け、中央捜査局(Central Bureau of InvestigationCBI)の捜査で十分だとの姿勢を保ってきた。

 同問題を最も強く追及しているのが、ヒンズー教系の野党インド人民党(Bharatiya Janata PartyBJP)だ。BJPは、シン首相が、これほど長期間にわたって沈黙を続けてきた理由を明らかにするには会計委員会では不十分だと主張。調査委員会が設置されなければ、2月の議会でも審議に協力しない姿勢を示している。

 一方、捜査当局は20日、ラジャ氏に事情聴取に応じるよう求めていることを明らかにした。捜査の一環として、ラジャ氏や側近の自宅および事務所には、すでに家宅捜索が入っている。

  国民会議派は、2009年の選挙後、小規模政党と連立与党を組み政権の座についた。だが、10月に主催した英連邦競技会(Commonwealth Games)では、費用が予算を超過したうえ、競技会に関する調査で疑わしい契約や手抜き工事などが見つかるなど相次ぐ不祥事に見舞われており、インド政界は混迷を深めている。(c)AFP/Penny MacRae