【12月1日 AFP】11月初旬にイランのナタンツ(Natanz)にあるウラン濃縮施設の稼働が一時的に停止した理由は、サイバー攻撃だった可能性があることが、AFPが入手した国際原子力機関(International Atomic Energy AgencyIAEA)の報告により明らかになった。

 ただしイランのウラン濃縮では古い技術が使われているため、さまざまな技術的問題に脆弱だと専門家らは指摘している。

■11月中旬に一時停止

 IAEAの報告によると、ナタンツの施設で11月に少なくとも1日、ウラン遠心分離機にまったく核物質が供給されない日があった。

 どの程度の期間にわたって供給が止まったのか、IAEAの査察団は正確には把握できていないが、11月16日の数時間か丸1日、あるいはそれ以上にわたって停止したとみている。イラン当局は11月22日、IAEAに遠心分離機への核物質の供給は戻っていると通知した。

 イラン当局はサイバー攻撃があった可能性を即座に否定し、ウラン濃縮作業に技術的問題が発生したことも否定している。しかし専門家らは、最近イランの原子力施設のシステムに侵入した「スタクスネット(Stuxnet)」と呼ばれるコンピューターウイルスによって、ナタンツの施設が停止したという説は「ありうる」とみている。

■「スタクスネット」が旧式設備に障害与えた?

「スタクスネット」はイランと対立するイスラエルが、イランの核計画を妨害するために作成したものではないかと疑われている。米シンクタンク「カーネギー国際平和基金(Carnegie Endowment for International Peace)」の上級研究員、マーク・ヒッブス(Mark Hibbs)氏は「(スタクスネットが)遠心分離機の制御システムに技術的障害を与えることは十分ありうる。遠心分離機は非常に繊細なため、1基がトラブルを起こせば多数が停止することはありうる」と語る。

 イランが使用しているウラン遠心分離機の大半は、「P-1」あるいは「IR-1」と呼ばれるもので、1970年代に生産された旧式のものに基づいており、障害が生じやすいという。英シンクタンク、国際戦略研究所(International Institute for Strategic StudiesIISS)のマーク・フィッツパトリック(Mark Fitzpatrick)上級研究員は「頻発する技術的問題を解決しようとした際に停止してしまったということも大いにありうる。そうした問題を生じさせたのがスタックスネットであるかもしれないが、いずれにせよP-1自体に問題がある」と説明する。

■遠心分離器を更新か

 カーネギー国際平和基金のヒッブス氏は、イランが近い将来に信頼度の高い新式の遠心分離機に置き換える可能性もあると述べている。

 IAEAの報告によると、8月末時点でナタンツには8856台のIR-1遠心分離機があったが、現在は8426台に減っている。このうち現在、核物質が供給されているのは半数あまりの4816台だけとなっている。

 またイランはIAEAに対し、イラン北西部のコム(Qom)に近いフォルドウ(Fordow)にある、イランで2番目のウラン濃縮施設にあるIR-1遠心分離機の3分の1を減らす意向も伝えている。この施設は、欧米の情報機関が発見するまでイラン側がその存在を認めていなかった施設だ。この動きについて、ISISのデービッド・オルブライト(David Albright)氏は、イランが、ウラン濃縮施設としてのフォルドウの役割を縮小することを決めたあらわれだ、とみる。

 一方ヒッブス氏は、「IR-1遠心分離機による計画は静かに終了し、より新式の分離機へと移行するだろう」とみている。(c)AFP/Simon Morgan