【11月14日 AFP】13日にミャンマーの民主化運動指導者、アウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)さん(65)の自宅軟禁が解除された。スー・チーさんを支援してきた人権団体などは歓迎する談話などを発表した一方で、同国の軍事政権の意図や、民主化が進展する可能性については懐疑的な見解が相次いだ。

 スー・チーさんを法的に支援してきた米人権団体「フリーダム・ナウ(Freedom Now)」の代表、Jared Genser氏は声明で、スー・チーさんは過去に3度も解放されていると指摘し、「軍事政権が元には引き返せない対話のプロセスを開始し、その結果、軍政と国民民主連盟(National League for DemocracyNLD)、各民族グループ間の国民和解とビルマ(ミャンマー)の民主主義の回復につながらなければ、彼女が解放されたとしても実質的にはほとんど意味がない」と述べた。

 同じく国際人権監視団体「ヒューマン・ライツ・ウオッチ(Human Rights WatchHRW)のエレイン・ピアソン(Elaine Pearson)アジア副ディレクターも、「(スー・チーさんの)解放は、国際社会の目を不当な総選挙からそらそうという軍事政権のごまかし」だとみる。「もしも軍政が、選挙後の政治的自由の拡大に本気であれば、即座に無条件ですべての政治犯を釈放するはずだ」。

 英国に拠点を置くミャンマー系人権団体、「ビルマ・キャンペーンUK(Burma Campaign UK)」のZoya Phan氏も軍政の動機には注意を要するとしている。「アウン・サン・スー・チーの解放は民主改革ではなく、PR戦略だ。私たちの民主化運動指導者がついに解放されたのを目にしたことに興奮はしたが、解放自体はいかなる政治的プロセスの一部でもない。それどころか今月7日に明らかに不正な選挙を実施した独裁政権が肯定的な評価を得ようと意図したものだ。獄中にいるほかの何千人もの政治犯を忘れてはならない」と語った。

 国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)のサリル・シェティ(Salil Shetty)事務局長は、「不法に引き延ばされた不当な刑が終わりを告げただけ。決して軍政側の譲歩ではない」と指摘し、「ミャンマー政府が自国の法を犯し、平和的な反政府活動家を罰することがないよう、中国やインド、東南アジア諸国連合(ASEAN)、国連(UN)を含む国際社会が協力していかねばならない」と述べた。

 一方、ナビ・ピレー(Navi Pillay)国連人権高等弁務官(UN High Commissioner for Human Rights)はやや楽観的だ。「民主政治への移行にミャンマー政府が真剣であるしるし。アウン・サン・スー・チー氏の解放はこのプロセスに大きく影響する」ととらえ、軍政はほかの2200人の政治犯も釈放すべきだと語った。しかし、スー・チーさんの解放が総選挙前でなかった点については「非常に失望した」と述べた。(c)AFP