【11月8日 AFP】ロシアの新聞各紙で主要政治家の風刺画の掲載を避ける傾向が高まり、風刺漫画家らがインターネットに新天地を求めている。

 ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)首相やドミトリー・メドベージェフ(Dmitry Medvedev)大統領などを風刺する、ロシアでも数少ない漫画家のビクトル・ボゴラード(Viktor Bogorad)氏(61)は「政治闘争がなく、出版物が当局に仕切られているところに政治風刺画は存在しない」と語る。

 同氏の風刺画は経済紙ベドモスチ(Vedomosti)と英字紙モスクワ・タイムズ(Moscow Times)に掲載されているが、いずれもフィンランドのメディアグループSanomaが所有する新聞だ。

 印刷物に風刺画が掲載されなくなるなか、風刺漫画家らはインターネット上に目を向けている。風刺を専門にしたロシアのウェブサイト「Kremlingremlin.ru」には、プーチン首相がメドベージェフ大統領を操り人形にしている場面が描かれている。

 政治風刺の取り締まりを取り仕切ってきたのは、プーチン氏だ。90年代に人気の高かったテレビの風刺人形劇「Kukly」は、プーチン氏が大統領に就任した直後に放送を終了した。人形劇には、プーチン氏をモデルとした醜い人形が登場していた。放送局も2002年、国営傘下となり、以降「風刺はアンダーグラウンドに潜った。プーチン勢力下では風刺は存在できない」と、かつての「Kukly」制作関係者は述懐する。

 最近、サンクトペテルブルク(Saint Petersburg)で開催された風刺画の変遷を特集した展示会「Russia and the United States: Political Cartoons Yesterday and Today」の来場者は「昔はロシアにも風刺画があったが、今は美術館など特別な所でしか見られない」と語った。(c)AFP