【10月31日 AFP】中国の次期後継者と目される習近平(Xi Jinping)国家副主席(57)は市場に理解のある人物とされているが、政治的な権力基盤は弱く、最高権力者となった後も権力掌握までに時間がかかるだろう、と専門家はみている。

 習副主席は18日の第17期中央委員会第5回全体会議(5中全会)で党中央軍事委員会副主席に任命され、2013年に任期が終わる胡錦涛(Hu Jintao)国家主席の後継者の座をほぼ確実にしたとみられている。

  中国共産党の英雄を父に持つ習氏は、福建(Fujian)省長、経済活動の活発な浙江(Zhejiang)省党委員会書記、中国の金融 中心地である上海(Shanghai)市の党委員会書記などを歴任し、市場改革にも好意的な人物とみられている。

  米シンクタンク、ブルッキングス研究所(Brookings Institution)のチェン・リ(Cheng Li)シニアフェローは「習氏は非常に市場に理解があり、中流階級と民間企業を代表した行動をとる可能性がかなり高い。国家による独占の問題にも対応 するだろう」と語る。

■政治的には体制維持

 しかし、政治的な見解や指導力の面では「非常に不透明」(リ氏)であるのも確かだという。

 中国で習氏といえば、胡主席の側らで写真に収まる無口で少しずんぐりとした風ぼうの人物で、いつも党の公式見解に沿った発言をし、妻は有名な歌手というイメージだ。

 専門家たちは、習氏は保守的な政治姿勢を維持するだろうとみている。

 そもそも習氏に次期後継者の白羽の矢が立った大きな理由は、江沢民(Jiang Zemin)前国家主席ら権力者たちが、習氏の革命の英雄としての血筋が習氏を体制維持に向かわせると考えたからだ。

 さらに、習氏は共産党の最も保守的な機関の1つとされる中央党校(党の高級幹部養成機関)の校長でもある。

  中国の反体制活動家の孫文広(Sun Wenguang)元山東大学(Shandong University)教授は「習氏のこれまでの行動からすると、習氏が現在の硬直した体制を打破するような行動や革新的なことをすると期待すべきで はない。現体制を維持する可能性が最も高い」と語る。

■市場改革には理解

  習氏が赴任した上海や福建省、浙江省は、輸出にけん引される中国の経済成長と市場改革の最前線だった。そこで習氏は、多くの外国人投資家とのパイプを得た と、香港中文大学(Chinese University of Hong Kong)の政治アナリスト、ウィリー・ラム(Willy Lam)氏は語る。

 中国では外国企業の活動を制限する動きが広がっているが、外国人投資家とのパイプを持つ習氏ならばこういった動きを抑制する可能性もある。

 ラム氏は「温家宝(Wen Jiabao)首相や胡錦涛主席は本格的に外国のビジネスマンを相手にしたことは一度も無い。習氏なら、外国人ビジネスマンたちのニーズがよくわかるだろう」と指摘する。

■弱い権力基盤

 とはいえ、中国の国家政策がますます党中央の指導者層によって集団的に決定されることが多くなっているなか、習氏の権力基盤は、これまでの次期指導者たちの中で最も弱い部類に入る。このことによって習氏は制約を受けるだろう。

 江沢民前主席は長年上海市のトップを務めたことから、上海閥からの強力な支持を得ていた。また、胡錦涛主席は、中国共産主義青年団という強固な基盤をもとにトップに登りつめた。

 習氏の基盤となるのは、共産党幹部の子女たちという血統をもとに政界・財界の地位を確保した「太子党」だが、2013年以降も政治力を維持するとみられている胡主席に対抗できるほどの力は無いとされている。

「1期目は権力基盤固めに費やされることになる。習氏が経済その他の分野にどのような強固な考えを持っていようが、習氏の2期目以降にならなければ現実の政策には反映されないだろう」(ウィリー・ラム氏)

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