【10月31日 AFP】新しい技術により、米国をはじめとする各国でインターネットなどを使った電子投票が可能になりつつある。一方で、システムのセキュリティーに対する懸念も高まっている。

 投票システムのセキュリティーを監視する財団Verified Voting Foundationによると、2010年現在、米国の33州が電子メールやファックス、オンラインでの投票を認めている。このようなシステムは投票率を上げる可能性がある一方、セキュリティーには疑問符がついている。

 9月にワシントンD.C.(Washington D.C.)のインターネット投票システムが試験運用された際には、驚くべきセキュリティー上の欠陥が明らかになった。

 ミシガン大学(University of Michigan)のアレックス・ハルダーマン(Alex Halderman)教授が率いたコンピュータ科学の学生たちのチームは、いとも簡単に投票システムに侵入し、投票数の改ざんやパスワードの変更をしたほか、システムを操作してミシガン大の応援歌まで流れるようにしてしまった。

 ハルダーマン教授は、作業を始めて3時間ほどでコンピュータープログラムの弱点を見つけ、36時間もしないうちにシステムを掌握したと語った。さらに悪いことに、イランや中国などのハッカーも侵入を試みていたことに気付いたという。「あのシステムのぜい弱さからすれば、(ハッカーたちの)攻撃は成功していただろう」(ハルダーマン教授)

 ハルダーマン教授らコンピューターの専門家たちは、今回の侵入実験で現時点では修正できないオンライン投票システムの欠陥を明るみに出せたとしている。

 世界中で選挙の監視・支援を行う財団International Foundation for Election SystemsRichard Soudriette名誉会長は「インターネット投票は将来のトレンドとなるだろうが、十分なテストをし、信頼できるという保証を得る必要がある」と指摘する。

 電子投票システム会社Everyone Countsのポール・デグレゴリオ(Paul DeGregorio)氏は、電子投票システムは病気などで投票所に行けない人や海外居住者、若年層などの有権者の投票の機会を広げるとし、紙と鉛筆の投票に戻ることは多くの人の選挙権を奪うことになると指摘する。

 海外に居住する米国人有権者を支援する財団Overseas Vote FoundationSusan Dzieduszycka-Suinat代表は「現時点では、安全と証明されたインターネット上の投票システムはない」としている。(c)AFP/Rob Lever