【9月15日 AFP】14日に行われた民主党(Democratic Party of JapanDPJ)の代表選は、世論の支持に後押しされたかたちで菅直人(Naoto Kan)首相が、陰の実力者、小沢一郎(Ichiro Ozawa)前幹事長に勝利した。選挙戦で米軍基地問題を持ち出した小沢氏の敗北に同盟国の米国は安堵(あんど)したことだろう。だが、これで日本が泥沼から抜け出せるか否かは定かではない。

 実際のところ、米国は今回の代表選にほとんど言及していない。米国務省のフィリップ・クローリー(Philip Crowley)次官補は「日本の内政問題」との認識を示し、米軍普天間飛行場(US Marine Corps Air Station FutenmaMCAS Futenma)の移設問題については「引き続き、日本と協力していく」と述べた程度だ。 

 だが、昨年に半世紀におよんだ自民党(Liberal Democratic PartyLDP)政権を倒して民主党が政権の座について以来、非公式に小沢氏に対する不満を口にしてきた米政府関係者は少なくない。

 ある国務省関係者は、小沢氏が首相でもないのにバラク・オバマ(Barack Obama)大統領との会談を強く要求してきたことに驚いたという。さらに小沢氏は最近、「米国人は単細胞」と語って米国人の心証を損ねた。

■小沢氏敗北で安堵

 「小沢氏が代表選に敗れたことで、米政府には安堵感が広がっているのではないか」と、外交政策分析研究所(Institute for Foreign Policy AnalysisIFPA)アジア太平洋研究所のウェストン・コニシ(Weston Konishi)副所長はいう。だが、その安堵感は「菅氏のほうが、まだまし」というものだ。「菅氏が日米同盟を推進するのか、普天間問題を解決に導けるのかは不透明だ」。

 小沢氏は、かねてから米国から自立した日本を持論としてきた。民主党政権の成立後、当時、幹事長だった小沢氏は米政府とは距離を置く一方で、航空機5機をチャーターして国会議員や業界幹部らを引き連れて北京(Beijing)を訪問している。

 保守派の米シンクタンク「ヘリテージ財団(Heritage Foundation)」のブルース・クリンガー(Bruce Klingner)上級研究員は、一党独裁の中国と米国を同列に扱うような小沢氏の姿勢を取り上げ、米国は同盟国がそのような態度をとることを望まない、と指摘した一方、代表選で勝利し首相の座にとどまった菅氏については、「遅まきながら民主党も、ようやく中国や北朝鮮の脅威を認識した、ということだろう。鳩山由紀夫(Yukio Hatoyama)前首相や政権交代直後の民主党よりは、アジアに対して現実的な対応をすると思われる」との期待を示した。

■菅氏の現実的な姿勢に期待

 横浜で11月に開催されるアジア太平洋経済協力(Asia-Pacific Economic Cooperation forumAPEC)首脳会議では菅首相が議長を務めるが、米ジョンズ・ホプキンス大学(Johns Hopkins University)エドウィン・ライシャワー東アジア研究センター(Edwin Reischauer Center for East Asian Studies)のケント・カルダー(Kent Calder)所長は、「世界の健康や環境問題など、オバマ大統領と協調して日米共通の利益を推し進める絶好の機会となるだろう」と語った。

 また「菅氏は日米関係の重要性をよく理解している。もちろん国際社会での存在感を強めている中国も大事だが、米国と中国の違いをはっきりと認識して対応できるはずだ」と述べ、菅氏への期待感を示した。(c)AFP/Shaun Tandon