【9月15日 AFP】耳の不自由な英外交官が、手話ができる専門の通訳などに「金がかかりすぎる」という理由で、カザフスタンの大使代理への採用を撤回されたとして雇用審判所に訴えた。英人権団体の平等人権委員会(Equality and Human Rights CommissionEHRC)が14日、発表した。

 差別していると英外務省を訴えたのは、ジェーン・コーデル(Jane Cordell)さん(44)。手話のできる専門の通訳を雇用するためにかかる50万ポンド(約6600万円)のコストを支払うことはできないとして、カザフスタンのアスタナ(Astana)での大使代理ポストの採用を外務省が撤回したという。

 幼いころの事故で聴覚を失ったコーデルさんは、外務省が「体の不自由な人の職業的な成功にガラスの天井を設置した」と訴えた。

 英国の各省庁は、5月から政権を担当しているデービッド・キャメロン(David Cameron)英首相の連立政権の公約に従い、記録的な財政赤字に取り組むために、大幅な予算の緊縮要求に直面している。

 コーデルさんを支援するEHRCのキャサリン・スペイン(Catherine Spain)氏は「英外務省の年間予算は22億ポンド(約2910億円)ある。ジェーンさんのために支払う額は多いとはいえない」と語った。スペイン氏は、英国の外交官は子どもの私学教育費手当を受け取っているが、コーデルさんは子どもがおらず、「実際は(コーデルさんの雇用は)安い」と述べた。

 一方、外務省は、体の不自由なスタッフにも均等な機会を提供するよう「全力を尽くしている」と反論した。審判は11月に言い渡される。(c)AFP