【9月8日 AFP】中国で一般市民など新たに台頭した外部勢力が、中央政府の影響力を著しく高めているとした報告書を、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research InstituteSIPRI)が6日、発表した。国際社会への積極参加を求めるこうした勢力は、中央政府の外交政策決定にも、少なからず影響を及ぼしているという。

 同研究所で中国問題を担当するリンダ・ヤコブソン(Linda Jakobson)氏は、フィンランド・ヘルシンキ(Helsinki)でAFPの取材に応じ、「今では党幹部でさえ、多様な意見を考慮せざるをえない状況だ」と話した。

 新たな外部勢力とは、国家機関のみならず民間団体、地方自治体や有識者からメディアやネットコミュニティを通じた一般市民まで幅広い。こうした人びとからの「声」は、ある程度、党幹部の耳にも届いているという。

 中央政府における政策決定は依然として非公開であり、共産党や人民解放軍などの既存勢力に対し、新勢力の意見が、どの程度まで政策決定に反映されているのかは定かではない。だが、ヤコブソン氏は多方面からの意見を聞き入れざるを得ない中国政府は、もはや一枚岩の組織ではないことは明らかだと指摘した。

 台頭著しい新勢力は、党中央部との個人的なコネといった従来のチャンネルだけでなく、新聞への投書、ブログ、公の場での演説、テレビ討論会など、多様な場で意見を表明し、中央政府への影響力を強めている。

 これらの開かれた媒体によって、中国は、ある程度の多元性と公な議論を容認する国家へと変遷を遂げつつあると、ヤコブソン氏はみている。

 また、報告書は、これらの新勢力は、国際社会において自国利益を強く保護する態度を中国政府に求める傾向があり、中国は今後、より積極的に国際社会に関与していくだろうと予想している。

 その一方で報告書は、グローバル経済への過剰依存を嫌う政局内の保守派との駆け引きに、新勢力が巻き込まれる可能性も指摘。 一例として、「欧米的価値観の流入は、人権、透明性、アカウンタビリティ(説明責任)問題について、中国共産党による一元管理を困難にする」との国家安全省の懸念を紹介している。

 こうしたことからヤコブソン氏は、欧米諸国は中国が抱いている「より開かれた中国は、国を脆弱(ぜいじゃく)化させる」との不安を取り除くような態度で接することが望ましいと話した。(c)AFP/Aira-Katariina Vehaskari