【9月3日 AFP】1日出版されたトニー・ブレア(Tony Blair)元首相の回顧録「A Journey(旅)」では、大きく報じられたイラク戦争犠牲者に対する贖罪の気持ちのほかにも、酒でストレスをまぎらわしていた様子や妻の存在、そして故ダイアナ元英皇太子妃(Princess Diana)のことなど、1997~2007年の首相在任時代の体験が赤裸々に綴られている。

■ストレスを癒す酒と妻

 首相官邸のあるダウニング街(Downing Street)での暮らしは、ブレア氏や弁護士でもあるシェリー(Cherie Blair)夫人、在任中に生まれた1人を含む4人の子どもたちに「多大なストレス」となった。アルコールがリラックスするための「心の支え」になり、日常の酒量は医師の助言の「上限ぎりぎり」だったという。

「夕食前にウイスキーかジントニックをぐっとやって、食事中はグラス1~2杯のワイン。時にはボトル半分明けたりもした。ひどく飲み過ぎというほどではなかったが、酒に頼るようになっているのは自覚していた」

 労働党党首の座を狙っていた時の夫人との一夜の営みについても明かした。

「1994年5月12日の夜だ。身勝手なのは分かっていたが、私にはシェリーの愛が必要だった。強さを与えてくれるまで、私はそれを貪った。私は本能に突き動かされた動物だった。その先に待ち受ける事態に立ち向かうには、情動がもたらす力と回復力が必要なことが分かっていたのだ」

■ダイアナ元妃亡き後の女王との関係

 1997年のダイアナ元妃の事故死に際しての英王室との関わりも記している。ブレア氏はダイアナ元妃の「大ファン」だったとし、しかし元妃の死の直後、エリザベス女王(Queen Elizabeth II )は「尊大な態度で」ブレア氏に接したと振り返っている。

 元妃の死後に英王室の避暑地であるスコットランドのバルモラル(Balmoral)を訪れた時、王室伝統のバーベキューの後片付けのために女王がゴム手袋をしていたのは「耐え難かった」という。

■「感情的知性ゼロ」――後任ブラウン氏を酷評

 ブレア氏の後任となったゴードン・ブラウン(Gordon Brown)前首相を厳しく批判するくだりもある。

 在任時代は財務相として自身を支えたブラウン氏の政権を、ブレア氏は「最悪」と批評。2人の間に存在した個人的な緊張関係について、かつてなく率直に暴露した。

 いわく、ブラウン氏は「イライラさせられるが優秀」で「変わった男」であり、「感情的知性ゼロ」。ブラウン氏が首相になった暁には、史上最長となった労働党政権も「末期だ」と思ったとして、「いま振り返って(ブラウン氏の首相就任を)止めるべきだったと言うのはたやすいが、当時はほとんど不可能だった」と回顧している。

(c)AFP

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