【7月22日 AFP】米農務省の黒人女性局長が、講演で人種差別的な発言をしたと報道されて解雇された。その後、講演は人種間の融和を訴える内容だったことが分かり、米政府は21日、この女性に謝罪したことを明らかにした。

 南部ジョージア(Georgia)州農村開発局長だったシャーリー・シェロッド(Shirley Sherrod)氏は、全米黒人地位向上協会(National Association for the Advancement of Colored PeopleNAACP)で講演した際、20年以上前に白人の農業生産者と関わった経験から、人種的な偏見の克服が非常に重要だと語っていた。

 しかし、白人の農業者に対する人種的偏見を持っていると受け取れるように編集された映像がテレビとインターネットで流されたことから、シェロッド氏は解雇された。

 事実確認が不十分なまま拙速な判断を下したとして批判を受けたトム・ビルサック(Tom Vilsack)農務長官は記者会見を開き、自身に対する批判を受け入れ、シェロッド氏に直接謝罪するとともに、専門性を生かせる新しい仕事を提示したことを明らかにした。また、過去において農務省が人種的に少数派の農民に公民権の面で問題のある対応をしてきたことを指摘し、今回の件を考える際にはこのような歴史も考慮して欲しいと述べた。

 NAACPも当初は、誰であれ人種差別的な発言は容認しないとしてシェロッド氏を解雇すべきと主張していたため面目を失う形になった。NAACPの会長は最初に講演の一部を放送したFoxニュースと、この動画を掲載したウェブサイトのオーナーを批判した。 

 政府の対応はあまりにも性急で、人種問題などの微妙な問題に過敏になりすぎていると批判されている。大手メディアも政府を批判しているが、多くの報道機関もシェロッド氏の講演の全体を確認しないままこのニュースを報じたとして批判を浴びている。

 ロバート・ギブズ(Robert Gibbs)米大統領報道官は記者会見で、「シェロッド氏に対して謝罪する必要があるのは疑いない。政権を代表して彼女に謝罪したい。この件に関係した全員が、十分に事実を把握しないまま決断してしまった」と述べた。(c)AFP