【6月30日 AFP】米国内でロシアによるスパイ網を摘発したという米連邦捜査局(FBI)の発表に対し、30日のロシアのメディアは一斉に、米露関係を修復路線から逸脱させようとする説得性のない作り話だと非難した。

 ロシアの日刊紙コメルサント(Kommersant)は「今回の派手なスパイ・スキャンダルには、まったく説得性と必要性がない」と一蹴した。

 またほかの数紙は、ロシアのスパイが米国に潜入していたというスキャンダルの真の矛先は、ここ数年の冷えた二国関係の修復へとかじを切ったバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領だという論調で足並みをそろえた。

 大衆紙トゥヴォイ・ディエン(Tvoi Den)は「ばかげすぎている。米国の諜報機関は、でっち上げたロシアのスパイを摘発するという愚かなことをして、自分たちの大統領をおとしめている」と書いた。

 ロシア政府とつながりの強い大手新聞モスコフスキ・コムソモレツ(Moskovsky Komsomolets)は、「このストーリーの標的は、自分の国内に多くの敵を抱えるオバマ氏だと考える方が理にかなう」と指摘し、さらに「情報活動というよりも多分に政治的なスキャンダルだ」と評した。

 独立系紙ネザビシマヤ・ガゼータ(Nezavisimaya Gazeta)は「FBIによる、米露関係の和解の妨害だ」と言い切った。

 ただしコメルサント紙は、このスパイ・スキャンダルに対する米露双方の政府の反応を見ると、急速に改善している二国間関係への影響はとどめたいとの意図が見えると指摘した。

 またロシア外交筋高官の情報として同紙は、スパイ・スキャンダルがあおられることがないよう、ロシアのすべての「雄弁な発言者たち」が、公の場でコメントしないよう命じられたと報じた。通常はロシア政府の立場に立って積極的に発言している人物の多くが29日はコメントを拒んでいる。(c)AFP