【6月11日 AFP】菅直人(Naoto Kan)首相は11日午後、就任後初の所信表明演説を行い、ギリシャ型の崩壊を避けるためには膨らんだ国債を減らす税制の抜本改革が必要だと訴えた。

■超党派で財政再建へ

「もはや国債発行に過度に依存する財政は持続困難。ギリシャに端を発したユーロ圏の混乱に見られるように、公的債務の増加を放置し、国債市場における信認が失われれば、財政破たんに陥るおそれがある」

 菅首相はこう指摘した上で、「税制の抜本改革に着手することが不可避。現状の新規国債の発行水準を継続すれば、数年のうちに債務残高はGDP比200%を超えることとなる」と語り、超党派による「財政健全化検討会議」を設置して議論することを提唱した。

■実質2%の経済成長めざす

 また、「私の内閣が果たすべき使命は、20年近く続く閉塞(へいそく)状況を打ち破り、元気な日本を復活させること」とし、2020年度までの年平均で実質2%を上回る経済成長を目指す決意を表明。「グリーン・イノベーション」「ライフ・イノベーション」「アジア経済」「観光・地域」を成長分野に掲げ、これらを支える基盤として「科学・技術」と「雇用・人材」に関する戦略を実施するため、具体策を盛り込んだ「新成長戦略」を月内に公表すると述べた。

 外交については、日米同盟を「アジア・太平洋の安定と繁栄を支える国際的な共有財産」と位置付け、これを基軸としつつアジア諸国との連携を強化する方針を発表。米軍普天間飛行場(US Marine Corps Air Station FutenmaMCAS Futenma)の移設問題では日米合意を踏まえると述べた。

■信頼回復が最大の責務

 菅首相はまた、前年の政権交代から9か月足らずでの鳩山由紀夫(Yukio Hatoyama)前首相の辞任に関して、「当初いただいた政権への期待が大きく揺らいだ」と認めるとともに、「私に課された最大の責務は、歴史的な政権交代の原点に立ち返って、この挫折を乗り越え、国民の皆さんの信頼を回復すること」と言明。

 自らの政治運動が婦人運動や平和運動への関与から始まったことを紹介し、「1票の力が政治を変える。当時の強烈な体験が私の政治の原点だ」と強調。「リーダーシップは、個々の政治家や政党だけで生み出されるものではない。国民の皆様が『よし、やってみろ』と私を信頼してくださるかどうかで、リーダーシップを持つことができるかどうかが決まる」と述べた。(c)AFP/Shingo Ito