【5月19日 AFP】米コーネル大(Cornell University)とマサチューセッツ工科大(MIT)の科学者2人が、米政府のミサイル防衛計画は根拠の薄い「技術的な神話」に基づくもので、迎撃実験の大半は向かってくるミサイル弾頭を打ち落とせず失敗に終わっていると指摘する共同研究を発表した。

 コーネル大のジョージ・ルイス(George Lewis)氏とMITのセオドア・ポストル(Theodore Postol)氏は、軍縮・軍備管理問題の専門誌「アームズ・コントロール・トゥデイ(Arms Control Today)」最新号に『Flawed and Dangerous US Missile Defense Plan(欠陥だらけで危険なアメリカのミサイル防衛計画)』と題する報告書を発表した。

 2人は、大陸弾道間ミサイルによる攻撃を阻止するために開発された海上配備型迎撃ミサイル「SM-3」の迎撃実験10回分のデータを検証し、実際に模擬弾頭への直撃に成功した例は1~2回にすぎないと結論した。これが実戦であれば「弾頭は破壊されることなく標的に向かって進み、8~9割はたどり着いて爆発する」とルイス氏は警告する。

 米国防総省は、02~09年にかけて行った迎撃実験について「成功だった」と発表してきたが、これに対し2人は「作り話以外の何ものでもない。このような技術的神話に従った政策戦略では、外交政策が大失敗しかねない」と報告書で指摘した。また早期警戒衛星やレーダーによる警戒網によるミサイル追跡の正確性、あるいはミサイル以外の物体の残がいやデコイ(おとり)とミサイルを識別する能力に疑問も示している。

 しかし米ミサイル防衛庁(Missile Defense AgencyMDA)は18日、同報告は「不備が多く不正確で、誤解を招くものだ」と反論した。(c)AFP