【5月1日 AFP】来週に迫った英総選挙は、与党・労働党と2大野党の保守党、自由民主党の三つどもえの戦いが注目を集めているが、西部ウェールズ(Wales)地方のポートタルボット(Port Talbot)では、ちょっと変わった「スーパーヒーロー」が議会を通じて変革の風を吹かせようと立候補している。

 どぎついオレンジ色の全身に金色のマントをひるがえす彼の名は、「キャプテン・ビーニー(Captain Beany)」。英国人がこよなく愛するトマトソース漬けの缶入りベークドビーンズの「化身」だ。有権者は政治家たちに愛想を尽かしており、こうした政治家たちを「やっつける」スーパーヒーローが求められている、というのがその主張だ。

 ちなみに正体は、以前はコンピューターのオペレーターとして働いていたバリー・カーク(Barry Kirk)さん(55)。地元ではちょっとした有名人だ。

■マニフェストならぬ「豆フェスト」で勝負

 キャプテン・ビーニーが立候補した「故郷アベラボン(Aberavon)」――本人曰く「ポートタルボットの上品な名前」――の選挙区は、ウェールズ南部沿岸の経営難にあえぐ製鉄所の町で、与党労働党(Labour Party)の地盤。俳優のリチャード・バートン(Richard Burton)やアンソニー・ホプキンス(Anthony Hopkins)を輩出した土地としても知られる。

 同地選出の国会議員を目指すキャプテン・ビーニーは、選挙対策本部であるパブ「レッドライオン(Red Lion)」でAFPの取材に応じ、「変革の風は近づいている。空気の中にそのにおいがするぞ!」と語った。「選挙の熱狂を感じるだろう。ほら、豆のソースの中に!」 「政治家たちはでたらめなやつらばっかりだ。誰か少し違うタイプの人を入れてみて、変化が起きるか確かめてみるべき時が来た」

 そんなキャプテン・ビーニーの「新世紀豆党(New Millennium Bean Party)」のマニフェストならぬ「豆フェスト(beanyfesto)」は、すべての入れ墨(タトゥー)を英語とウェールズ語の「2か国語表記」にすることや、歩道にこびりついたチューンガムを削り落とし、それで道路の穴を補修すること、汚職に関与した政府高官の顔をトイレットペーパーに印刷することなど。もっとも、税制度やアフガニスタン政策、教育政策などでまじめな提案もしている。

 キャプテン・ビーニーは、英国の奇人変人候補者の伝統を受け継ぐ1人だ。過去の選挙では、「モンスター・ レイビング・ルーニー党(Monster Raving Loony Party、怪物・狂乱・間抜け党)」のスクリーミング・ロード・スッチ(Screaming Lord Sutch、スッチ絶叫卿)など、多くの奇抜な衣装に身を包んだ候補者たちが立候補している。(c)AFP/Robin Millard