【4月8日 AFP】中央アジア・キルギスで7日に政権を掌握し、暫定政府樹立を宣言した野党勢力を率いるローザ・オトンバエワ(Roza Otunbayeva)元外相は8日、首都を脱出したクルマンベク・バキエフ(Kurmanbek Bakiyev)大統領(60)に辞任を要求した。

 オトンバエワ氏は議会の解散も宣言し、暫定政府が一時的に大統領と議会の機能を兼務する方針を示した。また6か月以内に大統領選を行うことを誓約した。

 首都ビシケク(Bishkek)を脱出したバキエフ大統領についてオトンバエワ氏は、出身地である同国南部オシ(Osh)で態勢の立て直しを試みていると指摘した。バキエフ大統領の現時点での所在は不明だがキルギス、カザフスタン、ロシアのメディアも同大統領はオシで身の安全を確保していると伝えている。

 キルギスの保健省高官は8日、キルギスで7日に起きた野党勢力と治安部隊の衝突で75人が死亡し、約1000人が負傷したと述べたが、野党側幹部は死者は100人を超えると語った。

 オトンバエワ氏は国民に事態の沈静化を呼び掛け、また現時点でどちらの側につくか態度を明確にしていない軍に対し、武力を行使しないよう求めた。またアフガニスタンにおける大西洋条約機構(NATO)軍の中継地点となっているビシケク郊外の米軍基地については、政変に関係なく運用されると述べた。

■ロシアは野党勢力支持の姿勢示す、国連は特使を派遣へ

 旧ソビエト連邦の構成国ながらキルギスには米軍基地があるが、ロシアは暫定政府を支持する姿勢を示している。

 オトンバエワ氏はロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)首相と電話で会談してロシアへの配慮を示した。プーチン首相の報道官ドミトリー・ペスコフ(Dmitry Peskov)氏はこの電話会談で「プーチン首相はオトンバエワ氏に対し、ロシアは常にキルギス国民に人道支援を行ってきたし、現在もその用意がある旨を伝えた」と述べた。

 ロシアのドミトリー・メドベージェフ(Dmitry Medvedev)大統領も「これはキルギスの内政問題だが、抗議形態を見る限り、現政権に対する普通の人々の怒りが爆発したものだと考える」との声明を発表した。

 国連(UN)の潘基文(パン・キムン、Ban Ki-moon)事務総長はキルギスへの特使派遣を発表した。

 政治的腐敗と慢性的な情勢不安が続いてきたキルギスで起きた今回の事態は、当時のアスカル・アカエフ(Askar Akayev)大統領を追放した2005年3月の抗議行動を彷彿(ほうふつ)とさせる。(c)AFP/Matt Siegel and Tolkun Namatbayeva