【4月1日 AFP】1997年に北朝鮮から韓国に亡命し、脱北者としては最高位に当たる黄長ヨプ(ファン・ジャンヨプ、Hwang Jang-Yop)元北朝鮮労働党書記(87)は前月31日、米ワシントンD.C.(Washington D.C.)で講演し、北朝鮮問題で必要な解決策は「思想戦」だと述べるとともに、中国がその気になれば北の体制はたやすく崩壊するだろうとの見解を示した。(ヨプは火ヘンに「華」)

 黄元書記は、金正日(キム・ジョンイル、Kim Jong Il)総書記の教育係を務め、最高人民会議(議会)を統括し、チュチェ思想(主体思想)を作り上げた人物とされる。97年に北京(Beijing)訪問中に韓国に亡命し、北朝鮮の暗殺対象者リストのトップに掲載されているという。

 シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)で講演した黄元書記は、金総書記が死亡しても問題は解決しないとして、北朝鮮を攻撃するという選択肢を低く評価。「解決策は思想戦だ」と述べ、むしろ北朝鮮国民に人権侵害の実態を知らせることが重要だと語った。

「思想戦」とはどういうものかと問われると、北朝鮮で外国メディアに接することが可能な人はごく少数だとの認識を述べた上で、かつての日本統治下において朝鮮人民が山中で行ったような抵抗運動を組織することをそれとなく示唆した。

 また、北朝鮮が米国や韓国、日本を攻撃すると脅していることについては、全くの虚勢だと発言。「この情報は決して公開してはならない。なぜならばこの北朝鮮の秘密を知っているのはわたし1人だからだ」とジョークも交えた。

 対米関係や、対中関係について、「側近らとプライベートな会話をしている時、彼(金総書記)は米国のことを決して悪く言わない。むしろ、プライベートな場所で彼が非難しているのは中国だ」「中国こそが北朝鮮の生命線。中国と北朝鮮が決別することがあれば、それは体制の終わりを意味するだろう」などと述べた。(c)AFP/Shaun Tandon