【3月15日 AFP】(一部訂正)13日にロシア軍の侵攻と自国大統領の死亡を伝える偽の報道番組が放映され、一時パニック状態となったグルジアでは14日、放送したテレビ局に国民の激しい非難が殺到した。

 問題の発端は13日の民間テレビ局Imediの報道。2008年のロシア軍によるグルジア侵攻の映像を流し、ロシア軍の戦車部隊が首都トビリシ(Tbilisi)に向けて進行中と伝えた上に、サーカシビリ大統領は殺害され、野党指導者の一部がロシア軍側についていると報じた。

 野党はこの虚偽報道について、ミハイル・サーカシビリ(Mikheil Saakashvili)大統領に反対する勢力に汚名を着せるために、グルジア政府自らが仕組んだ狂言だったと非難している。

 一方、サーカシビリ大統領本人は報道をかばうような発言をして国民の怒りに油を注いでいる。「非常に不愉快な報道だったが、最も不愉快な点はこれが実際に起こりうる事態に非常に近かったこと、そしてグルジアの敵が考えつきそうなことに近かったことだ」と大統領はテレビで語った。

 地元メディアによると、この報道を受け各地で警戒態勢が取られたほか、心臓発作や気絶を起こす市民が続出し、救急サービスには記録的な件数の電話が殺到した。

 映像の放映直前に「シミュレーション」であることを知らせる短いアナウンスはあったものの、報道は本物にしか見えず、また放送中にはシミュレーションであることを知らせる注意は何もなかった。

 ニセ報道でロシア軍側についていると名指しされた1人、野党「民主運動・統一グルジア(Democratic Movement-United Georgia)」の党首ニノ・ブルジャナゼ(Nino Burjanadze)元国会議長は「政府のプロパガンダだ」と激しく糾弾し、AFPの取材に「自国民に対する現政権の扱いは非道にもほどがある。多くの国民が心にトラウマを負わされた。このニセ番組の1秒1秒すべてを、サーカシビリ(大統領)は承認しているはずだ」と語った。また自分に対する中傷だとして、政府とImediテレビの双方を訴えるとも述べた。

 これまでにもグルジアの野党は、政府がImediなど大統領に近い筋が運営している国営テレビ網を用い、政府に批判的な者たちを攻撃してきたと批判している。ロシア当局も早急にグルジア政府の挑発だという見解を示した。

 今回の虚偽報道について政府関係者は、事前に情報があったという報道を否定し、そうした報道は無責任だと逆に責め返している。

 サーカシビリ大統領は、ブルジャナゼ氏の「尊厳」を傷つける目的はなかっただろうと虚偽報道を擁護する一方で、ブルジャナゼ氏が最近、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)首相を含むロシア政府上層部と会合をもったことについて、「グルジア人の血で手が染まった連中と握手をする人物たちに敬意を表すことはない」と強烈に非難した。

 テレビ放送を規制するグルジアの国家コミュニケーション委員会は、今回の虚偽報道が法律に違反するかどうかの調査を開始したことを明らかにし、場合によっては同チャンネルに対し何らかの措置が取られるだろうとしている。(c)AFP/Michael Mainville