「テロとの戦い」めぐり前・現米副大統領が論争、バイデン氏とチェイニー氏
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【2月16日 AFP】米国で現オバマ政権のジョー・バイデン(Joe Biden)副大統領(67)と、前ブッシュ政権のディック・チェイニー(Dick Cheney)前副大統領(69)がテレビインタビューを介し、「テロとの戦い」をめぐって強烈(しれつ)な舌戦を繰り広げている。
チェイニー氏は米ABCテレビのインタビューで、国家安全保障において、バラク・オバマ(Barack Obama)大統領と民主党政権は信じられないほど「うぶ」だと評し、2001年9月11日の米国同時多発テロが再発することは「ありえない」とした最近のバイデン氏の発言について、「そんな心構えでは、適切な動員と優先順位が図れない」「完全に間違っている」と批判した。
これに対し、バイデン氏は14日のインタビューで「チェイニー氏にあるのは自分の主張を表明する権利だけだ。歴史を改ざんする資格はない」と述べ、チェイニー氏がオバマ政権のテロ対策が手ぬるいという印象を与えようとしていると反論した。
3つのテレビ局が互いの映像を見せて反論させるインタビューを行ったため、外交と安全保障政策において意見が激しく対立する長年のライバル同士であるチェイニー氏と上院外交委員会の元委員長でもあるバイデン氏の間で論戦に発展した。
■敵対視か対話か、真反対の外交スタンス
オバマ大統領は09年3月、ブッシュ・チェイニー正副大統領が率いた政権の「テロとの戦い」における政策によって「米国のイメージと世界における位置づけが著しく損ねられた」と強く批判した。また、キューバ・グアンタナモ(Guantanamo)米海軍基地内にあるテロ容疑者収容施設の閉鎖を目指し、非友好国を「悪の枢軸」扱いしたブッシュ政権の外交スタンスから、より対話を重視する非好戦的なアプローチへと方向転換を図っている。
そのブッシュ政権の強硬的な対テロ政策の立案者ともいえるチェイニー氏は、同政権下でテロリスト容疑者に行った水責めによる尋問方法を現在も支持し、米ノースウエスト(Northwest Airlines)機爆破未遂事件のナイジェリア人被告に対しても、同じ手法を使うことができたとまで述べた。
オバマ政権になってからは、水責めのような過酷な尋問手法は米国の理念に反するとして禁じられた。バイデン氏は14日のテレビで、ノースウエスト機事件のウマル・ファルーク・アブドルムタラブ(Umar Farouk Abdulmutallab)被告(23)からは、自白を促す接し方を通じて「重要な情報」を引き出すことに成功していると言い切った。
しかし、共和党は同被告を軍に引き渡すべきだったと主張している。チェイニー氏はオバマ大統領が「米国をテロ攻撃に陥れようとしており、犯罪にも等しい行為だ」と糾弾し、「(ノースウエスト機事件についても)米国に対する戦略的脅威に変わりはなく、戦争と同様に対処すべきだ。われわれはそうして(ブッシュ政権の)7年半の間、新たな攻撃を防いできたのだ」と激しく応酬した。
チェイニー氏はグアンタナモの収容施設についても断固として正当性を主張し、同時多発テロ事件の主犯格の一人とされるハリド・シェイク・モハメド(Khalid Sheikh Mohammed)被告の裁判をグアンタナモ内の特別軍事法廷ではなく、連邦地裁で行うことにしたオバマ政権の決定についても、被告に「プロパガンダの場を与えるだけ」と酷評している。
しかし、バイデン氏は、チェイニー氏自身が誤情報に踊らされていたのでないとすれば、故意に米国民に誤った情報を与えていたのだと皮肉を交え、さらにブッシュ政権下の特別軍事法廷で裁かれたテロリスト容疑者は3人しかおらず、そのうち2人はすでに釈放されていると指摘した。
バイデン氏はさらに強調し、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)の指導者ウサマ・ビンラディン(Osama bin Laden)容疑者に追随する者たちは現在、逃走に必死な状態で、「過去のように遠くから何かを起こせる力はない。われわれは最重要幹部20人のうち12人を抹殺し、戦闘員100人前後を捕らえた。彼らを地下に葬り去ったのだ」と語った。(c)AFP