【2月12日 AFP】ビル・クリントン(Bill Clinton)元米大統領(63)が11日に心臓の手術を受けたことについて、担当医師が同日記者会見し、予後は良好で週明けには仕事に復帰できるとの見通しを示した。

 クリントン元大統領は同日、胸に不快感をおぼえ、ニューヨーク・プレスビテリアン病院(New York Presbyterian Hospital)に搬送され、ステントと呼ばれる医療チューブ2個を血管内に埋め込んで冠状動脈を広げる手術を受けた。クリントン氏は2004年、4か所の心臓バイパス手術を受けている。

 米ニューヨーク(New York)の同病院前で記者会見したアラン・シュワルツ(Allan Schwartz)医師は、元大統領は心臓発作ではなかったと述べた。心臓に損傷はなく、予後は非常に良好で12日にも退院できる可能性があり、「15日には彼の非常に行動的なライフスタイル」に戻れるだろうと語った。

 ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)国務長官は元大統領に付き添うため、ワシントンD.C.(Washington D.C.)からニューヨークの病院に急行した。米国務省は12日に予定されていた同国務長官の湾岸諸国訪問の出発を1日延期し、13日にすると発表した。

 バラク・オバマ(Barack Obama)大統領はクリントン元大統領に電話し、早期の回復を願っていることを伝えた。ホワイトハウス(White House)によると、元大統領は「気分はとても優れている」と答えたという。ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)前米大統領、国連(UN)の潘基文(パン・キムン、Ban Ki-moon)事務総長も見舞いのメッセージを伝えた。

■大統領退任後も強い存在感

 2期8年を務めた米国大統領を2001年に退いてからも、クリントン氏は極めて多忙な生活を送ってきた。この20年間、報道からクリントン氏の動静が消えたことはほとんどない。

 大統領退任後は自身の財団を通してエイズ(AIDS)予防の啓発活動や、アジアの大津波の復興活動、そして最近ではハイチの震災復興支援に尽力している。2003年には複数の大手製薬会社と交渉し、途上国向けのエイズ治療薬の価格を引き下げさせることに成功した。

 また2008年の米大統領選挙では、民主党の公認候補選出で立候補した妻のヒラリー・クリントン上院議員(当時)を強力に支援した。本選数週間前に現大統領のオバマ氏支持にまわったものの、ヒラリー氏がオバマ政権の国務長官に就任した後は、国務長官の夫として活躍している。

 2009年には北朝鮮を訪問し、拘束されていた米国人ジャーナリスト2人の解放に貢献し、再び外交の世界で存在感を示した。そして今月5日には、ハイチ大地震の復興で遅れている救援物資の到着を促するため、1月12日の地震発生以降2度目の同国訪問を果たしたばかりだった。

 ホワイトハウス時代は大食漢としても知られ、特にジャンクフード好きの一面が報じられていたが、退任後は食事にはかなり気をつけているようだ。シュワルツ医師は、多忙な生活や食事が今回の症状の原因ではないと語った。

■1日23時間、フルスピードのライフスタイル

 米アーカンソー(Arkansas)州で比較的貧しい家庭に生まれたクリントン氏は、10代のころから政治家を志し、同世代の政治家のなかで優れた戦略家として頭角を現した。10年にわたり同州の知事を務めた後に、1993年1月20日、民主党では12年ぶりの第42代米大統領に就任。1996年には2期目に入り、引退後も米政界全体に大きな影響力を持ち続けている。

 経済面では、平時としては米国史上最長となった景気拡大期の大統領として民主党員の尊敬を集め、連邦政府の財政を均衡させた。また外交でも、イスラエルのイツハク・ラビン(Yitzhak Rabin)首相とパレスチナ自治政府のヤセル・アラファト(Yasser Arafat)議長(いずれも故人、肩書きは当時)によるオスロ合意を仲介し、中東和平で大きな成果を上げた。

 しかし、同時にホワイトハウスの研修生モニカ・ルインスキー(Monica Lewinsky)さんとの不倫スキャンダルと、それに続く弾劾裁判はクリントン氏の政治的業績に傷をつけ、20世紀後半の米政治家としては最も物議を醸した1人でもあった。
 
 友人たちはクリントン元大統領を「スピードを落とせない男」と表現する。元大統領の選挙参謀だったジェームズ・カーヴィル(James Carville)氏は米CNNに「あの人にはアクセルというものがない。あるのはオンかオフかのスイッチだけ。それも1日に23時間はオンのままで、オンのときは常に全速力しかない」と語った。(c)AFP/Sebastian Smith


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