【2月11日 AFP】1980年代の旧ソ連によるアフガニスタン侵攻時、米中央情報局(CIA)の秘密作戦に協力し、ソ連軍の撤退に功績を残したとされ、映画『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー(Charlie Wilson's War)』のモデルともなったチャーリー・ウィルソン(Charlie Wilson)元米下院議員が10日、米テキサス(Texas)州の病院で心不全により亡くなった。76歳だった。

 テキサス(Texas)州選出の下院議員(民主党)だったウィルソン氏は、パーティー好きで陽気な人柄で知られ、地元の新聞からは「グッドタイム・チャーリー」のニックネームをちょうだいしたが、こうしたプレーボーイ的なイメージの一方で、冷戦時代の英雄のひとりとなった。

 80年代、ウィルソン氏は下院の国防歳出委員会メンバーとして動き、当時アフガニスタンを侵攻していた旧ソ連軍に対するCIAの極秘作戦のための予算を大幅に増額、数十億ドルという多額の資金を調達し、旧ソ連軍と交戦していたイスラム武装勢力に、武器を供給するなど大規模な支援を実現した。

 このアフガニスタン支援における業績は2007年に伝記映画『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー(Charlie Wilson's War)』として映画化もされ、主演のトム・ハンクス(Tom Hanks)がウィルソン氏を、ジュリア・ロバーツ(Julia Roberts)がウィルソン氏を支援する地元テキサス州ヒューストン(Houston)の富豪女性を演じた。

 しかし、アフガニスタンのイスラム武装勢力に行った軍事支援は、旧ソ連軍のアフガニスタン撤退当時は米政府周辺で勝利とみなされたものの、それ以降は意図せずして米国につきまとう災いの種となっていった。

 ウィルソン氏が支持し、CIAから100万ドル単位の支援を受けたアフガニスタンの軍閥たちは現在、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)などとのつながりをもつ危険なイスラム原理主義者とみなされている。中にはグルブディン・ヘクマティアル(Gulbuddin Hekmatyar)元首相や、アフガニスタンの旧支配勢力タリバン(Taliban)のジャラルディン・ハッカニ(Jalaluddin Haqqani)司令官も含まれている。

 しかし、2001年9月11日の米国同時多発テロ以後も、ウィルソン氏は「われわれは悪の帝国(旧ソ連)と戦っていたのだ。(支援しないとすれば)それは第2次世界大戦中にヒトラーと戦うソビエト軍に供給支援を行わないのと同様だ。当時、タリバンなんていう名前を知っていた人間なんていただろうか?」(2007年、タイム(Time)誌)などと述べ、アフガニスタンの「戦士」たちの軍事強化に荷担したことを悔いる発言は一切なかった。

 CIAはそれまでCIA要員にしか贈ったことのなかった功労賞を、文民として初めてウィルソン氏に贈っている。(c)AFP/Dan De Luce