【12月17日 AFP】パキスタンの最高裁判所は16日、大統領と政府高官らの訴追を免除してきた国民和解令(National Reconciliation OrdinanceNRO)を無効とする決定を下した。

 最高裁のイフティカル・ムハンマド・チョードリー(Iftikhar Mohammad Chaudhry)長官は、「NROの発布は国民の利益に反していると考えられる・・・したがってこれは憲法の多くの条項に違反している」などとした決定文を読み上げ、同令は違憲との判断を示した。

 アシフ・アリ・ザルダリ(Asif Ali Zardari)大統領は在任中の非訴追特権があるものの、イスラム武装勢力タリバン(Taliban)や国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)との戦いを進める米国の主要同盟国であるパキスタンの現政権に対する風当たりが強まるとみられる。

■3478件の事件が対象、法的手続き再開へ

 NROは2007年10月、民主的な選挙を実施し、約8年間におよぶ軍政を終わらせるよう求める国際社会の圧力を受けた当時のペルベズ・ムシャラフ(Pervez Musharraf)大統領が、ザルダリ現大統領とその妻の故ベナジル・ブット(Benazir Bhutto)元首相が選挙に立候補できるように出したもの。ブット元首相はその2か月後の07年12月に暗殺された。

 レーマン・マリク(Rehman Malik)内相やアフマド・ムフタル(Ahmed Mukhtar)国防相ら30人あまりの主要政治家を含む約8000人がこの和解令のもとで保護されてきた。

 殺人、着服、権力の乱用、数百万ドル(数億円)相当の銀行貸付の踏み倒しなど3478件の事件が国民和解令の対象になっていた。最高裁の決定を受け、国民和解令の対象となったすべての事件は07年10月5日時点の状態に戻り、法的手続きが自動的に再開されることになる。

 ザルダリ氏のパキスタン人民党(Pakistan People's PartyPPP)は08年の選挙に勝ち、同国は民政復帰を果たした。NROは前月末に期限が切れたが、PPPは国民和解令の更新に必要な支持を議会で得ることができなかった。

 NROによって汚職が増え、犯罪者が法の裁きを逃れているとして、弁護士や活動家らがNROに反対していた。(c)AFP/Nasir Jaffry