【11月28日 AFP】イランの人権活動家シリン・エバディ(Shirin Ebadi)氏(62)は27日、ロンドン(London)でAFPの取材に応じ、イラン当局が不法に高額の税金を課して同氏の資産を凍結し、ノーベル平和賞メダルを押収したとして当局を非難した。

 エバディ氏はイランで民主主義と人権を守る運動への貢献が評価され、2003年にノーベル平和賞を受賞した。ところが今年の6月のイラン大統領選が終わった直後、当局は2003年のノーベル平和賞の賞金について41万ドル(約3500万円)の税金を支払うよう要請してきたという。エバディ氏はマフムード・アフマディネジャド(Mahmoud Ahmadinejad)大統領を批判していた。同大統領は6月の大統領選で再選し、国内の反政府勢力の反発を招いている。

 これまで賞金について税金を払うよう求められたことは一度もなかったという。「税金があまりにも高額なので財務省に抗議を申し立てたが、現時点まで何の返答も得られていない」と言う。イランの法律によればノーベル賞の賞金は税金対象外だと、エバディ氏は主張している。

 イラン当局はノーベル賞メダル押収の事実を否定している。一方、同国外務省は、エバディ氏の資産を凍結したのは脱税していたことが理由であることを暗に認めた。

■イラン、ノルウェー政府が抗議の応酬

 エバディ氏によると、ノーベル賞のメダルは、同氏の夫がテヘラン(Tehran)の商業銀行、テジャラット銀行(Tejarat Bank)に借りていた貸金庫に預けていたが、当局はそこから違法にノーベル賞のメダルを持ち去り、その際に同氏の資産に関する文書も押収したという。
 
 エバディ氏は6月の大統領選の直前、スペインで開かれた3日間の会議に出席するため出国し、その後、帰国していない。だが近い将来、帰国する予定だという。夫は出国の許可を受けられずにいるが、「彼は政治とは何の関わりもなく、ただビジネスをしているだけだ」とエバディ氏は話す。

 エバディ氏が懸念しているのは、イランのウラン濃縮活動の停止と引き替えに、欧米諸国が人権侵害について見て見ぬふりをする可能性があることだという。

 エバディ氏のノーベル賞メダル押収に関し、ノルウェー政府はイラン当局を非難する声明を発表し、オスロ(Oslo)の駐オスロのイラン公使を呼んで抗議した。 ノーベル賞108年の歴史のなかでメダルが押収されたのはこれが初めてだという。

 これに対し、イラン外務省は駐テヘランのノルウェー大使を呼び、「エバディ氏の脱税という違法行為に関してノルウェーの外務大臣が行った内政干渉的な発言」に抗議した。(c)AFP