【11月27日 AFP】アフガニスタンで今年9月、国際治安支援部隊(International Security Assistance ForceISAF)の空爆で民間人に多数の犠牲者が出た問題で、軍の報告の内容を明らかにしていなかったとしてドイツのヴォルフガング・シュナイダーハン(Wolfgang Schneiderhan)統合幕僚長が辞任した。

 ドイツのカールテオドール・ツー・グッテンベルク(Karl-Theodor zu Guttenberg)国防相が26日、連邦議会で明らかにした。

 ドイツではこの空爆前からアフガンへの兵力派遣への反対が強かっただけに、増派を検討しているアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相にとっては悪いタイミングでの発表となった。ドイツは米国、英国に次いで3番目に多い約4300人の兵力をアフガニスタンに送っている。

■タリバンが強奪した燃料輸送車を空爆

 この空爆はアフガニスタン北部クンドゥズ(Kunduz)州で今年9月4日、川を渡ろうとして動けなくなったイスラム原理主義組織タリバン(Taliban)が強奪した燃料輸送車に対して現地のドイツ軍指揮官が命じたもので、タリバン戦闘員だけでなく近くに集まっていた近隣住民が多数死亡した。

 アフガニスタン政府が9月に発表した報告によるとこの空爆で民間人30人を含む99人が死亡した。空爆の直前にはアフガン駐留米軍のスタンリー・マクリスタル(Stanley McChrystal)司令官が民間人の犠牲者を避けるようにとの命令を出したばかりだった。

■民間人の犠牲者当然予想できた?

 独紙ビルト(Bild)はタリバンが奪った燃料輸送車が激しく爆発してきのこ雲を上げた直前、民間人がその周囲に集まっていた様子を上空から撮影した動画をウェブサイトに掲載した。

 ビルトは、ドイツ軍指揮官が空爆を命じたとき、燃料輸送車の周囲に民間人がいる可能性は排除できなかったという軍の秘密報告書の内容を引用して報じた。NATOの交戦規則ではこのような場合に空爆を命じることはできない。

 グッテンベルク国防相は民間人に犠牲者が出ていたという報告が公表されていなかったというビルトの報道を確認し、自身は今月25日に初めてこの事実を知ったと語った。

 シュナイダーハン幕僚長が10月下旬に引用した北大西洋条約機構(NATO)の秘密報告書によると、死者は17~142人で、現地消息筋によると民間人の死者は30~40人に上ったとされる。

 あるNATO関係者は今月、米軍のF15戦闘機2機が、現場に集まった民間人を驚かせて燃料輸送車の周囲から離れさせるため、低空飛行をさせるよう2度にわたり求めたが、ドイツ軍の指揮官は500ポンド(約227キロ)爆弾を投下するよう命じたことを明らかにした。

■当時の国防相にも批判

 ビルト紙は事件当時の国防相だったフランツ・ヨゼフ・ユング(Franz Josef Jung)現労働社会相も、空爆の2日後、独自の情報に基づいて犠牲者はタリバンの戦闘員だけだったと発言したとして批判している。

 ビルトの報道によると、空爆の数時間後に現場の指揮官らはドイツ国内の軍本部に、クンドゥズの病院に2人の十代の遺体があり、10~20歳の6人が負傷したと報告していた。

 さらに指揮官らは空爆前、タリバンが地元のモスクを襲撃し、トラクターを使って動けなくなった燃料輸送車から燃料を取り出すよう多くの住民に強要し、その後14人の行方が分からなくなったと報告していたという。

 ユング労働社会相は26日の議会で、自分がこの情報を知ったのは10月5日か6日で、この情報をNATOにも送るよう指示したが、その情報の中身が「具体式に意味すること」は知らされなかったと述べ、自身の辞任を否定した。(c)AFP/Simon Sturdee