【11月4日 AFP】バラク・オバマ(Barack Obama)氏が米大統領選で歴史的勝利を収めてから、4日で1年となる。「正しいと信じる変革(Change We Can Believe In)」を約束していたオバマ大統領だが、浮き沈みのあったこの1年を経て、今では「変革は難しい」と弱音を吐くこともある。

 2008年11月4日、共和党のジョン・マケイン(John McCain)候補を破って大統領に選出されたオバマ氏は、地元シカゴ(Chicago)の公園で数万人もの支持者からの賞賛の渦の中にいた。オバマ氏が「米国はまだ何でも実現できる国」だと声高に語る中、「わたしたちにはできるのだ(Yes we can)」と繰り返す支持者らの心は希望で満ち、ほおには涙が伝っていた。

 オバマ氏は会場で「長い時間がかかった。だが今夜、われわれがきょう成し遂げたことで、この選挙で、この決定的瞬間に、米国に変革の時が来たのだ」と語った。それから1年がたち、過去数十年で最悪の景気後退に苦しむ国民の意見はさまざまで、内政の舵取りは難しく、米国初の黒人大統領の歴史的約束にとって、試練のときが訪れている。

 海外ではいくつかの成果を上げている。イラク戦争の終結を公約に掲げていた大統領だが、アフガニスタンでの戦争では増派問題を抱えている。大統領は疲労し、政治的求心力は衰えつつあるが、何とか持ちこたえ、支持率も大統領職の遂行に十分な50%を保っている。

 年内には政権が国内の最重要課題に掲げる医療保険制度改革法案の成立や、ロシアとの戦略核兵器削減条約の調印も達成できるかもしれない。雇用情勢の悪化は政治的脅威であるものの、米国経済の成長支援を慰めとすることもできる。また、ノーベル平和賞の受賞も米国の対外的なイメージ改善にもつながる可能性もある。

■「変革は難しい」?

 国内外からの非常に大きな期待がなかったならば、大統領就任後最初の10か月はまずまずの成功とみることができただろう。「変革は難しい」「変革は簡単ではない」「変革は一夜でにして実現できるものではない」などと語るオバマ大統領の言葉に、公約実現の難しさがにじみ出ている。

 医療保険制度改革、金融規制改革、気候変動対策などの、ここ数十年で最も野心的と言えるオバマ大統領の政策は、議会でつまずきを見せている。これまでのところ、内政では総額7870億ドル(約71兆円)規模の景気対策法案の成立が最も大きな成果といえるだろう。

 下院の全議席と上院の3分の1が改選される連邦議会中間選挙の実施を来年11月に控え、オバマ大統領の懸案は10%にも上る失業率だ。景気の迅速な回復への期待は、ひっ迫した金融市場、大規模な財政赤字、長引くサブプライムローン問題などで薄らぎ、オバマ大統領は何とか政府の経済危機を誘発する体質の脱却を図らなければならない。

 変革が実現された分野もある。大統領は幹細胞研究への助成を解禁したほか、過酷な尋問を禁止し、女性従業員への給与支払い差別を違法とした。さらに、違法クレジットカード会社に制限を加え、グリーンエネルギー企業に対する支援を開始した。

 国際的には、気候変動に対する米国の政策を転換し、イスラム世界との「新たな始まり」を約束した。選挙公約であるイラクからの駐留米軍撤退については、支持者の期待より時間はかかるかもしれないが、軌道に乗っているようだ。(c)AFP/Stephen Collinson