【10月27日 AFP】北朝鮮の人権状況を調査する国連(United NationsUN)のビティット・ムンタボーン(Vitit Muntarbhorn)特別報告官は26日、食糧難が伝えられる北朝鮮で家計を担う女性への締め付けが特に厳しくなっていると懸念を示した。

 ムンタボーン報告官は前週、国連総会(UN General Assembly)に提出した報告書のなかで、北朝鮮の人権を「最悪」と評しているが、米ワシントンD.C.(Washington D.C.)にあるシンクタンク「韓米経済研究所(Korea Economic Institute)」で26日に行った講演でも、「近年、特に女性が置かれた状況は悪化する一方だ」と語った。

 ムンタボーン報告官によると、49歳未満の北朝鮮女性は商業活動を行うことが禁止されている。北朝鮮当局は、女性のズボン着用や自転車使用を禁じているが、これも女性の商業活動を困難にすることを意図した規制とみられる。

 また、若年女性と当局間のあつれきが表面化していることについて、国際的な食糧支援の減少に伴い食料不足が深刻化するなか、こうした政策に対する女性の不満を反映したものだとの見方を示した。

 北朝鮮が近年、規制を強化していることについて、ムンタボーン報告官は、北朝鮮国民が国に依存する体制を維持したい当局が、国民への影響力を失うことを恐れているためだと説明した。

 女性への締め付けが厳しくなっている現状に関しては、男性が労働力として炭鉱などへかりだされるなか、女性たちが家計を担うべく積極的に商売などを行っているからだと話した。しかし、家計の中心となって働く48歳以下の女性に対して、商業活動が禁止されれば、人びとの生活に多大な負の影響がもたらされるのは明らかだと、ムンタルボン報告官はいう。

 北朝鮮は、ソ連が崩壊した1999年、一時的に自由市場を認める政策を導入。外国からの食糧支援も受け入れたが、2005年に再び規制強化に方針を転換。国内最大の卸売市場を閉鎖したため、国民は農民市場で売買される数少ない作物をのぞき、穀物や農産物を国営の商店で購入せざるをえなくなった。

 さらに、ムンタボーン報告官が国連総会に提出した報告書によると、北朝鮮当局は、小規模農業にも規制を科す計画だという。

 北朝鮮では、5月に実施したミサイル発射や核実験をうけた各国の制裁で、海外からの食糧支援が激減。世界食糧計画(World Food ProgrammeWFP)は北朝鮮に供給する食糧を、当初計画の600万人分から200万人分以下へと縮小を強いられている。

 タイの大学で法学を教えるムンタボーン氏は、2004年から国連の北朝鮮の人権状況特別報告者を務めている。(c)AFP