【8月27日 AFP】台湾の馬英九(Ma Ying-jeou)総統は27日、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ(Dalai Lama)14世が31日から9月4日まで、台風8号(モーラコット、Morakot)で甚大な被害を受けた台湾を訪問することを許可した。ダライ・ラマ14世の訪問許可は、関係改善に取り組んできた中国との関係悪化につながりかねないとみられている。

 今回のダライ・ラマ14世の訪問は、民主進歩党(DPP)の自治体首長や議員らが要請した。馬総統は、台湾中部の南投(Nantou)県で記者団に対し、「ダライ・ラマ14世が訪問し、台風の犠牲者に祈りを捧げて追悼し、生存者らを祝福することを許可した」と語った。ダライ・ラマ14世は前年にも台湾への訪問を希望していたが、馬総統に適切な時期ではないと拒否されていた。

 中国政府は、ダライ・ラマ14世がチベットと中国の分離を画策していると非難しており、訪問を許可する国や地域に対しては強い反発を示してきた。今回の訪問には、台湾を中国領土の一部と主張する中国が、特に驚きを示すとみられている。中国政府は、台湾を統一すべき地域としており、そのためには、必要であれば軍事力も行使すると主張してきた。

 ダライ・ラマ14世は、1997年に歴史的な台湾初訪問を行い、2001年にも再訪した。今回は、463人の死者を出した2週間前の台風8号の被災地である台湾南部を視察する。中国政府はダライ・ラマ14世のこれまでの台湾訪問を非難しており、来週の訪問と、そこで予想される馬総統との会談は、馬総統が前年に就任して以来関係改善が進んでいた中台関係に大打撃を及ぼすとの見方がでている。与党国民党(Kuomintang)の一部議員も懸念を示しているという。

 台湾総統報道官のWang Yu-chi氏は、今回の訪問について「人道的、宗教的な配慮に基づいたものであり、中国と台湾の関係を傷つけるものではない」と述べ、政治的な意味づけがなされないよう努めている。(c)AFP/Amber Wang