【8月22日 AFP】1988年に英スコットランド(Scotland)のロッカビー(Lockerbie)上空で発生し270人が死亡したパンアメリカン(Pan Am)航空103便の爆破事件で唯一有罪となり終身刑を受けてスコットランドで服役していたリビアの元情報機関員、アブデルバセト・アル・メグラヒ(Abdelbaset Ali Mohmet Al-Megrahi)元受刑者(57)が20日、リビアに帰国した。

 スコットランド自治政府のケニー・マカスキル(Kenny MacAskill)司法長官は同日、メグラヒ受刑者を「温情的措置」によって釈放したと発表していた。20日夜、航空機でリビアの首都トリポリ(Tripoli)に到着した元受刑者はリビアとスコットランドの旗を振る数百人の群集から大歓迎を受けた。

 元受刑者の釈放は「誤り」と述べていたバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は元情報機関員が大歓迎を受けたことに「非常に異議がある」と述べた。この爆破事件で189人の国民が犠牲になった米国政府は大規模な歓迎をしないようリビアに申し入れていた。

 英国のデービッド・ミリバンド(David Miliband)外相は英BBCで、多数の人を殺した人物が英雄のように迎えられたことは心がかき乱される辛いことだと述べた。ゴードン・ブラウン(Gordon Brown)英首相はリビアの最高指導者、ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐に「配慮のある対応」を求める書簡を送った。

 メグラヒ元受刑者は末期の前立腺がんをわずらっており余命3か月未満だと診断されているが、遺族は釈放に怒りをあらわにしている。また米国と英国のメディアも釈放を強く非難する論調であふれている。(c)AFP