【8月18日 AFP】アフガニスタンの姉妹、リアハナさん(23)とファリダさん(18)は旧政権のイスラム原理主義組織タリバン(Taliban)の陰におびえながら育った。同政権がアフガニスタンの女性たちに課した厳しい制約を破って捕まり、打たれることを常に恐れながら、学校には行かずに家で勉強した。

■母親の世代から大きな変化

 20日に実施されるアフガニスタン2度目の大統領選挙で、首都カブール(Kabul)で経営系の大学に通うファリダさんは初めて投票する。アフガニスタンの将来がかかった選挙だ、と思っている。「母たちの世代とわたしの世代は大きく違う。選挙権をもてることは、とてもうれしい。選挙に参加して、自分の国の将来に意見を述べたいし、国に最も利益をもたらす候補を選びたい」

 今回の選挙の女性候補者の数は、大統領候補が41人中2人、副大統領候補が82人中8人、地方議会の議員候補3196人中では全体の10%を超える328人が出馬している。

 国外からはアフガニスタンの女性たちの状況は厳しく映る。圧倒的大半は地方に暮らし、教育機会や雇用機会は限られ、質の高い医療は受けにくく、妊娠をコントロールする手だてはほとんどない。

 しかし、タリバン政権崩壊以降の進歩はめざましいと、今回で2度目の投票になるカブール大学(Kabul University)のアラビア語科生であるリアハナさんは言う。「わたしたちの母はこんな機会は夢にも思ってなかったわ。タリバン政権下で母は家にひきこもっていた」。

 母親のファリマさんは45歳。1996年から2001年まで続いたタリバン政権の下では、すべての女性が同様だった。しかしファリマさんは、自分がむち打ちの刑を受ける危険を冒してでも、自宅に家庭教師を招き、娘たち4人がしっかり教育を受けられるようにと必死だった。「ときどき、先生が何日も来ないことがあると、タリバンに見つかったのではないかと思って怖かった」とリアハナさんは振り返る。
 
 現在、ファリマさんの娘2人は大学に通い、ほかの2人もそれを熱望している。アフガニスタンの高等教育を受ける学生の20%がいまや女性だ。

「(タリバン崩壊以降)アフガニスタンの女性にとってこれまで、男性にも同じだったように、大きな進歩と発展があった。政治における女性の権利もだ。女性が投票できるというのは、その大きな変化のひとつだ」と、「アフガニスタンの貧しい女性や少女のための教育と訓練センター(Educational and Training Centre for Poor Women and Girls of Afghanistan)」という小さなNGOを支援するアレゾ・カニさんは語る。「けれど、わたしたちはもっと多くの女性に、決定機関の要職に就いてほしいし、そうすれば発展も続くことができる。今回の選挙の候補者たちには、この点を訴えてロビー活動をしました」

■地方で根強いタリバンに対する恐怖

 都市部の女性たちが投票に意欲的なのに対し、広大な貧困地帯である地方の女性たちも同様とはいえない。彼女たちは、有権者が投票所へ行くのを妨害しようとするタリバンの脅威を特に強く感じている。アフガニスタン南部や東部地域に集中して激化している反政府活動に関与するタリバンの勢力は、公職に就くことを選択した女性たちを標的にしてきた。
 
 地方議員に立候補している女性候補たちのなかには、殺しの脅迫を受けている候補もいる。実際に4月には、高校教師で女性の権利拡大を求める運動家だったシタラ・アチクザイ(Sitara Achikzai)議員がタリバンに殺害された。学校に通う少女たちも襲撃されている。タリバン政権時代の重要都市だったカンダハル(Kandahar)では前年11月、女子生徒がスプレーで酸をかけられた。

 そうした過激な保守主義の谷間が、アフガニスタン全土に存在し、イスラム文化に深く埋め込まれていることは分かっている。リアハナさんは大きな変化は「突然起こすことはできなくて、時間が必要。社会の意識を変える運動を通じて、徐々に変えるしかない」と考える。しかし、今は、と彼女は言う。「わたしたちにとって、とても幸福な状況。わたしたちが、政治に参加できるのよ」(c)AFP/Lynne O'Donnell