【8月5日 AFP】北朝鮮へのビル・クリントン(Bill Clinton)元米大統領の電撃訪問は、米国人記者2人の解放に向けて細心の注意を払った4か月間に及ぶ外交努力の最終段階だったことを、米政府高官が明かした。

 同高官は、クリントン元米大統領が北朝鮮を離れてから数時間後の4日夜、熱心な外交努力によって2人の若いジャーナリスト、ユナ・リー(Euna Lee)記者とローラ・リン(Laura Ling)記者の自由を勝ち取ることができたのだと語った。

 核実験とミサイル発射を実施し国際社会から孤立した北朝鮮は、クリントン元米大統領を指名して同国への訪問を要請していたという。

 米女性記者2人が勤務していた米カレントTV(Current TV)を設立したアル・ゴア(Al Gore)元米副大統領も大きな役割を果たしており、記者の家族と米政府を橋渡しする役割を果たした。

 副大統領と大統領の関係だったゴア氏との協力を復活させる前に、クリントン元米大統領は一方で、バラク・オバマ(Barak Obama)政権に対し、北朝鮮に訪問する役割を引き受けるにあたって、この計画が成功する可能性があることの確約を求めたという。

 リン記者とリー記者は3月に北朝鮮と中国との国境沿いで取材を行っている際に拘束され、6月に12年の労働教化刑を言い渡されていた。その後、記者2人が米国の家族のもとへ定期的に電話をすることを許可された7月半ばごろに、2人の解放に向けた契機がおとずれたという。そして7月24、25日の週末、オバマ政権高官はクリントン元米大統領に対し、2人の救出という人道的なミッションを引き受けるかどうか、決断してほしいと話したという。

 一方、オバマ政権高官は、以前から内密に進められていた外交交渉のペースを上げた。これには、米国と北朝鮮の間には国交がないため、スウェーデンの在平壌(Pyongyang)大使館が協力した。

 ある米政府高官は、「さまざまな問題を検討するなか、クリントン氏の訪朝が外交交渉のためではなく、核問題と関連したものでもないことを、北朝鮮側が認識しているようだということが分かってきた」と語った。そして、「北朝鮮側が、米国人2人を解放するという人道的な目的にのみ限定して、個人の立場でのクリントン氏の訪問を認めると米政府に直接伝えてきた」という。

 米高官は、米国の主要同盟国に対しても、クリントン氏の北朝鮮訪問の可能性とその意図について、純粋に個人の立場による人道的ミッションであることを説明し、同地域の主要国であるロシアや中国と協議。クリントン氏の訪朝が、核問題とは「全く関係がない」ことを明確にし、また、クリントン氏が、記者2人の行動について一切謝罪をしない旨を伝えたという。(c)AFP/Stephen Collinson