「インターネット時代」に慎重に向かう日本の選挙運動
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【8月5日 AFP】衆院選を30日にひかえた日本。日本は言わずと知れたハイテク王国だが、麻生太郎(Taro Aso)首相や野党党首らがマイクロブログサービス「ツイッター(Twitter)」で「つぶやき」を発信するのを聴くことはできない。
バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は、ウェブを駆使することで前年の米大統領選に勝利した。しかし、日本の議員たちはインターネットを取り込むことになかなか腰が重く、若い有権者らに政治を遠くの出来事のように感じさせてしまっている。
18日の衆院選の公示後はインターネットを使った選挙運動が禁止となり、候補者がブログを更新したり、電子メールで政治観を意見交換したり、ウェブサイトに動画を投稿することが違法となる。
米国で誕生したツイッターを利用する日本の政治家はあまり多くない。オバマ政権は、ツイッターで「つぶやき」を発信することもあるかもしれない。しかし、麻生政権は間違いなくそういったことは行わない。
国民の60%以上がインターネットを日常的に利用する、世界で最もネット接続の進んだ国の1つである日本において、これは奇妙な状況である。日本における選挙活動は、いまだに地道なビラ配り、街頭でのお辞儀、選挙カーからの大音量での名前の連呼などに限られているのだ。
テンプル大学(Temple University)ジャパンキャンパスのジェフ・キングストン(Jeff Kingston)教授(アジア研究)は、日本の政治家たちは「ネット選挙運動を禁止することで、若い有権者たちの間に関心を呼び覚ます重大なチャンスを逃している」と指摘する。「前回の米大統領選では、若い有権者たちに活動を起こさせる上でインターネットが重要なツールとなった。しかし日本では、前回の総選挙で投票した若者は3人に1人にすぎなかった」
■変化の兆し
しかしながら、選挙活動は徐々にではあるがデジタル時代の方角に向かいつつある。
自民党(LDP)と民主党(DPJ)はそれぞれに凝った内容のウェブサイトを立ち上げ、動画投稿サイト「ユーチューブ(YouTube)」などへの投稿も始めている。とはいえ、その大半が党の記者会見や演説の様子を映しただけのものだ。
そんな中、ある動画が人気を博している。自民党が投稿したアニメーションで、民主党の鳩山由紀夫(Yukio Hatoyama)代表似の男性がディナーの席で女性に求婚するという内容だ。「ボクに交代してみないか?出産や子育ての費用も教育費も、老後の生活費も介護の費用も、ボクに任せれば全部OKさ!」「お金は大丈夫?」と質問されると、「細かいことは結婚してから考えるよ!」――アクセス数は4日までに40万回を超えている。
日本最大のインターネット商店街「楽天(Rakuten)」は、オンラインで政治家への寄付ができる国内初のサービスを立ち上げた。また、国内の多数のウェブサイトが、有権者同士の議論を活発化させる仕組みを提供しようとしている。
■公職選挙法改正の議論
ネットの政治活動で日本が他の国々よりはるかに立ち遅れている最大の原因は、やはり、1950年に制定された公職選挙法で公示後のインターネット利用が「文書図画の頒布」にあたるとして禁止されていることだ。
民主党は、公職選挙法について、自民党が改正を阻止してきたと非難。選挙に勝利すれば、公職選挙法を全面的に見直すと明言している。
民主党参議院議員の鈴木寛(Kan Suzuki)氏は、ネット選挙運動が認められない理由について、ネットユーザーのほとんどが民主党支持者であり、自民党は、若くテクノロジーに精通した若者が政策に詳しくならないようにしているのだと説明した。
鈴木氏は2007年、日本の政治家としては初めて、インターネット上の仮想空間「セカンドライフ(Second Life)」に事務所を構えた人物でもある。鈴木氏によると、日本のマスメディアは具体的な政策よりも政党間の対決に注目する傾向がある。しかし、有権者は「自民党対民主党」のニュースには飽き飽きしており、それよりも重要な政策について知りたいと思っており、だからこそインターネットには非常に重要な役割があるのだという。
■若者たちの意見
日本の若者たちの多くは、政治に関心があると答える。だが、グレーのスーツを着た60代男性が率いる2大政党に強い関心を持つのは困難だと感じている。ちなみに麻生氏は68歳、鳩山氏は62歳だ。
渋谷で若者に意見を聞いてみた。会社員の林さん(26)――「ちっちゃい子のけんかじゃないんだから、結局お互いのポリシーを責め合って自分のところをよく見せようとするだけに見えなくて。どこの政党がいいとか悪いじゃなくてみんなで良くして欲しい」「麻生さんもちょっと(カリスマ)あるかなと思ったけど。カリスマ性が欲しい」
友人の小林さん(23)――「アメリカとかの大統領はしゃべるのがうまいじゃないですか。日本の人って下手であまり説得力がない」(c)AFP/Daniel Rook
バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は、ウェブを駆使することで前年の米大統領選に勝利した。しかし、日本の議員たちはインターネットを取り込むことになかなか腰が重く、若い有権者らに政治を遠くの出来事のように感じさせてしまっている。
18日の衆院選の公示後はインターネットを使った選挙運動が禁止となり、候補者がブログを更新したり、電子メールで政治観を意見交換したり、ウェブサイトに動画を投稿することが違法となる。
米国で誕生したツイッターを利用する日本の政治家はあまり多くない。オバマ政権は、ツイッターで「つぶやき」を発信することもあるかもしれない。しかし、麻生政権は間違いなくそういったことは行わない。
国民の60%以上がインターネットを日常的に利用する、世界で最もネット接続の進んだ国の1つである日本において、これは奇妙な状況である。日本における選挙活動は、いまだに地道なビラ配り、街頭でのお辞儀、選挙カーからの大音量での名前の連呼などに限られているのだ。
テンプル大学(Temple University)ジャパンキャンパスのジェフ・キングストン(Jeff Kingston)教授(アジア研究)は、日本の政治家たちは「ネット選挙運動を禁止することで、若い有権者たちの間に関心を呼び覚ます重大なチャンスを逃している」と指摘する。「前回の米大統領選では、若い有権者たちに活動を起こさせる上でインターネットが重要なツールとなった。しかし日本では、前回の総選挙で投票した若者は3人に1人にすぎなかった」
■変化の兆し
しかしながら、選挙活動は徐々にではあるがデジタル時代の方角に向かいつつある。
自民党(LDP)と民主党(DPJ)はそれぞれに凝った内容のウェブサイトを立ち上げ、動画投稿サイト「ユーチューブ(YouTube)」などへの投稿も始めている。とはいえ、その大半が党の記者会見や演説の様子を映しただけのものだ。
そんな中、ある動画が人気を博している。自民党が投稿したアニメーションで、民主党の鳩山由紀夫(Yukio Hatoyama)代表似の男性がディナーの席で女性に求婚するという内容だ。「ボクに交代してみないか?出産や子育ての費用も教育費も、老後の生活費も介護の費用も、ボクに任せれば全部OKさ!」「お金は大丈夫?」と質問されると、「細かいことは結婚してから考えるよ!」――アクセス数は4日までに40万回を超えている。
日本最大のインターネット商店街「楽天(Rakuten)」は、オンラインで政治家への寄付ができる国内初のサービスを立ち上げた。また、国内の多数のウェブサイトが、有権者同士の議論を活発化させる仕組みを提供しようとしている。
■公職選挙法改正の議論
ネットの政治活動で日本が他の国々よりはるかに立ち遅れている最大の原因は、やはり、1950年に制定された公職選挙法で公示後のインターネット利用が「文書図画の頒布」にあたるとして禁止されていることだ。
民主党は、公職選挙法について、自民党が改正を阻止してきたと非難。選挙に勝利すれば、公職選挙法を全面的に見直すと明言している。
民主党参議院議員の鈴木寛(Kan Suzuki)氏は、ネット選挙運動が認められない理由について、ネットユーザーのほとんどが民主党支持者であり、自民党は、若くテクノロジーに精通した若者が政策に詳しくならないようにしているのだと説明した。
鈴木氏は2007年、日本の政治家としては初めて、インターネット上の仮想空間「セカンドライフ(Second Life)」に事務所を構えた人物でもある。鈴木氏によると、日本のマスメディアは具体的な政策よりも政党間の対決に注目する傾向がある。しかし、有権者は「自民党対民主党」のニュースには飽き飽きしており、それよりも重要な政策について知りたいと思っており、だからこそインターネットには非常に重要な役割があるのだという。
■若者たちの意見
日本の若者たちの多くは、政治に関心があると答える。だが、グレーのスーツを着た60代男性が率いる2大政党に強い関心を持つのは困難だと感じている。ちなみに麻生氏は68歳、鳩山氏は62歳だ。
渋谷で若者に意見を聞いてみた。会社員の林さん(26)――「ちっちゃい子のけんかじゃないんだから、結局お互いのポリシーを責め合って自分のところをよく見せようとするだけに見えなくて。どこの政党がいいとか悪いじゃなくてみんなで良くして欲しい」「麻生さんもちょっと(カリスマ)あるかなと思ったけど。カリスマ性が欲しい」
友人の小林さん(23)――「アメリカとかの大統領はしゃべるのがうまいじゃないですか。日本の人って下手であまり説得力がない」(c)AFP/Daniel Rook