【8月3日 AFP】5年前、ロシアがインドに退役した空母を譲渡した際、インド政府は大喜びだった。後にこれが金食い虫の厄介者になるとも知らずに――。

 長年インドへの兵器供給国であるロシアは、インド政府に対し2004年、改装費をもってロシアの造船所に9億7400万ドル(約920億円)を支払えば、退役空母「アドミラル・ゴルシコフ(Admiral Gorshkov、4万4570トン)」を譲渡すると伝えていた。同空母は27年前に就航し、旧ソ連崩壊後に退役した。

 その後、アドミラル・ゴルシコフの改修費は大幅にかさみ、2007年、ロシアはコストの増大を理由に、8億5000万ドル(約805億円)を追加請求した。さらに6か月前にもロシアは再度、追加費用を要求した。その額はなんと29億ドル(約2750億円)にも上った。

 またロシア政府は、同空母の引き渡しを当初計画から4年遅れの2012年まで延期した。しかし、2011年にはインド海軍唯一の空母「ビラート(Viraat)」は退役してしまう。

 インドの会計検査当局はこの問題について、もっと少ない費用で新たな空母が購入できたはずだと批判している。ロシアによる追加要求はインド国内で大きな反発を生み、インドのA・K・アントニー(A.K. Antony)国防相は今週、ロシアと再交渉中であることを議会で保証させられた。

■前にも後にも動けないインド

 インド政府はすでに、ロシアの国営造船所セブマッシュ(Sevmash)に数百万ドルを前払いしている。インド軍の退役司令官は「インド政府にとっては非常に頭が痛い問題だが、ここで手を引いてしまうと、1銭も戻ってこない」と語る。

 一方、今回の契約を担当するロシア国営の武器輸出会社Rosoboronexportは、インドをだましているという意見を否定している。同社の広報担当者はインドPTI通信に対し、「空母改装のひとつひとつのプロセスは、インド海軍の技術者チームが監視しているが、彼らは何の異議も申し立てなかった」と反論した。

 さらに、改装費が上がってる要因は、インド側が当初の契約になかった装備を要求しているからだと、造船所は指摘している。

 アントニー国防相は、インド政府は自前の空母建造を目指しているものの、現在のところはアドミラル・ゴルシコフと同規模の空母を提供してくれる国がないため、ロシアに頼るしかないとしている。ロシアはインドの軍用ハードウエアの70%を担っており、現在も総額9億ドルの軍事物資に関わる商談を進めている。

 この契約にも関わっているインド海軍のラジャ・メノン(Raja Menon)退役元帥は、ロシアはインドから最大限の支払いを引き出そうとしていると指摘する。メノン氏は、ロシア政府は伝統的に強引な武器取引を行ってきたと述べ、「ほかの契約でも費用をつり上げてきた。いつも、またうまくいくと思っている」と強調した。(c)AFP/Pratap Chakravarty