【7月14日 AFP】バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は訪問先のガーナで、「汚職で私腹を肥やす専制的な政治指導者」を非難したが、この言葉はアフリカ全土を揺るがし、13日にはナイジェリアからジンバブエまでの各国で、より良いガバナンス(統治)を求める声の大合唱となった。

 オバマ大統領は11日にガーナの首都アクラ(Accra)を日帰りで訪問し、熱狂的な歓迎を受けた。大統領は演説で、人民に対し、自分たちの未来を託せる強い政府を求めるよう呼びかけた。

 カメルーンのドゥアラ大学(University of Douala)のGuy Parfait Songue教授(政治科学)は、「(オバマ氏の演説は)アフリカを5世紀にわたり麻痺させてきた機能不全に対する宣戦布告のようだった」と振り返る。

■ケニアを暗に制裁?

 オバマ大統領がサハラ以南の初の訪問先にケニアではなくガーナを選んだことは、父親の故郷でもあるケニアで前年に大統領選挙の結果をめぐり暴力が吹き荒れた事実に再び目を向けさせることになった。ケニアの英字紙デーリー・ネーション(Daily Nation)には次のような投稿が寄せられている。「オバマは、改革が遅々として進まず汚職対策にも消極的なケニア政府を『罰している』のではないだろうか」

 オバマ大統領は、対アフリカの投資や貿易を拡大するかは、その国の政府の健全度で判断するとも述べた。 

 ガーナの民主的ガバナンスを求める団体の代表、Emmanuel Akwetey氏は、「彼は、アフリカとのパートナーシップを相互尊重に基づいて築くという重要で前例のない宣言を行った。この考え方のもとでは、アフリカ各国は自分たちの運命を自分たちの手で築くことが求められる」と話す。

「オバマは、アフリカに対し、発展途上を植民地主義のせいにすることなく、発展途上という事実を認めるよう求めた。オバマはアフリカに挑戦状を叩きつけたのであり、われわれはこれを真剣に受け止めなければならない」 

■ブッシュ時代の対アフリカ政策

 米国のアフリカ政策はすでに、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)前政権のもとで大幅な転換を遂げている。前年には、主にアフリカにおけるエイズ、結核、マラリア対策のための拠出額を3倍の480億ドルに増額。また、ブッシュ大統領時代の貿易法、そして原油高の影響もあり、アフリカ全体の07年の対米輸出額は00年比で3倍の511億ドルに達した。

 だが、アフリカ人が米国初のアフリカ系大統領に寄せる期待はこれまで以上に大きい。

■ジンバブエ野党は「励まされた」、スーダン政府は沈黙

 オバマ大統領に経済の崩壊と政治改革の取り組みについて指摘されたジンバブエでは、オバマ大統領のメッセージは、民主主義を獲得する闘いへの励ましと受け止められている。

 連立政権に参加する野党・民主変革運動(Movement for Democratic ChangeMDC)のNelson Chamisam広報担当は、「人々にインスピレーションを与えるメッセージだ。民主主義の実現に向けて闘っているすべての人々、アフリカが発展と目標を持った大陸であることを望むすべての人々、特に若い世代にとって、大いに励まされる」と話す。

 一方で、アフリカが直面する問題の一部、特にオバマ大統領の「スーダン・ダルフール(Darfur)地方ではジェノサイド(大量殺戮)が行われている」との批判については、これまでのところ一切反応がない。(c)AFP