【6月22日 AFP】デンマーク領グリーンランド(Greenland)で21日、08年11月に行われた住民投票で賛成75%の圧倒的多数で承認された自治権拡大に関する法律が施行された。これにより、グリーンランドはデンマークによる300年にわたる統治から、新たな自治の時代に入った。

 今回の自治権拡大で石油などの豊富な天然資源の権利もグリーンランド側が握ることになり、デンマークからの独立へさらに一歩近づいたと言える。

 自治権拡大が実現した21日、グリーンランドの中心都市ヌーク(Nuuk)の港には、イヌイットの聖歌隊が伝統的な歌を披露し、自治権拡大を祝った。

 港を見渡せる場所に建つ教会では記念のミサが行われたが、デンマークのマルグレーテ2世(Queen Margrethe)と夫のヘンリク王配殿下(Prince Consort Henrik)がイヌイットの伝統衣装を身につけ出席し、大きな拍手を浴びた。女王は、グリーンランド政府の新たな権限を規定する布告を、グリーンランド議会(Landsting)議長に手渡した。

 デンマークは1979年にグリーンランドの自治権を認め、限定的な自治を認めていた。だが今回、数年間にわたる交渉の結果認められた新たな自治権の下では、グリーンランドに天然ガスや金、ダイヤモンドなどの天然資源に関するより広い権利が認められることとなった。

 米科学者らによると、グリーンランドの北端には、特に石油や天然ガスが豊富に埋蔵されているとされ、地球温暖化によって厚い氷に覆われている未開発の天然資源へのアクセスが可能になり、自立経済に向けた確固たる基礎を築くことが可能になると見られている。

 デンマークのオーフス大学(Aarhus University)の歴史学者Lars Hovbakke Soerensenによると、こうした天然資源がグリーンランド経済を支えるだけの規模であることが確認されれば、グリーンランドはデンマークからの完全独立へ進むことになるとの見方を示している。

 世界の淡水資源の10%が存在する人口5万7000人のグリーンランドは、地球温暖化の脅威に最もさらされている地域の1つである。地球温暖化により、主力産業である漁業が大きな影響を受けるものと見られている。

 こうしたことから、グリーンランドの政治指導者たちは、経済の多様化とデンマーク依存からの脱却に向け、天然資源に目を向けざる得ない状況になってくるだろう。(c)AFP/Slim Allegui