【5月18日 AFP】バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は17日、米インディアナ(Indiana)州にあるカトリック系の名門校、ノートルダム大学(University of Notre Dame)の卒業式で演説し、妊娠中絶の議論について「共存の道を探るべきだ」と語った。

 オバマ大統領は、「中絶支持派と反対派の意見は対立している」としながらも、「米国の原則に立ち返り、相手の意見を悪と決めつけることなく議論を戦わせ、正しい道を見出さねばならない」と強調した。

 一方、大学前の道路には中絶に反対する活動家数百人が集まり、中絶された胎児の写真などを掲げて中絶の権利を支持するオバマ大統領に抗議した。

 中絶に反対していたジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)前大統領は、胎児の胚性幹細胞を用いた研究や米国外での中絶手術を支援・実施する団体などへの連邦政府の助成金を制限していた。中絶反対派は方針転換を図っているオバマ大統領に怒りを募らせている。

 また、中絶を支持するオバマ大統領に名誉学位(法学)を授与するノートルダム大の決定に対しても、中絶反対派やカトリック教会の指導者などから生命の尊厳を重んじる教会の教義に反するとして批判が集まっていた。

 しかし、同大で名誉学位授与式に臨むオバマ大統領を迎えたのは拍手と歓声、それにカメラのフラッシュだった。大統領が演説台に上ると、1万2000人の聴衆は立ち上がって拍手を送った。オバマ大統領のロゴマークが書かれた帽子を振って歓迎する学生もみられた。

 一方で中絶反対のシンボルである黄色い十字架と赤ん坊の足が書かれた帽子をかぶった学生もいた。オバマ大統領の演説も、「中絶は殺人だ」などの野次に4回さえぎられた。野次を叫んだ男性4人は、聴衆からブーイングを浴びせられ、ただちに警察官に外に連れ出された。

 地元メディアによると、校外では少なくとも活動家19人が逮捕されたが、大学構内では式典前に卒業生や家族が記念写真を撮るなど、おおむね平穏な雰囲気だった。

 オバマ大統領が就任後初めて最高裁判事の指名を準備しているなか、米国では中絶に関する議論が高まっている。中絶についてリベラルな姿勢の人物が最高裁判事に指名されれば、共和党の一部が強硬に反発することは確実だ。

 米国で最も感情的な論争の1つである中絶問題について、オバマ大統領は中絶は合法的であるべきとする一方で、望まない妊娠を防ぐため政府はあらゆる対策をとるべきだとの姿勢を示している。(c)AFP/Mira Oberman