【5月16日 AFP】バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は15日、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)前政権がキューバ・グアンタナモ湾(Guantanamo Bay)の米海軍基地内に設置した「テロとの戦い」の容疑者を裁く特別軍事法廷について、一度は「失敗だった」と批判したにもかかわらず、証拠採用についての新たな規則や容疑者の人権保護強化などの改善を行った上で存続させると発表した。

 オバマ氏の発表に対し、人権活動家らは怒りを表明し、グアンタナモ基地の「不公正」が存続することになると批判した。オバマ大統領は13日にも、容疑者に行われた虐待の写真の公開を見送ることを決めて、支持者らの落胆を買ったばかりだった。

 オバマ氏は声明で、特別軍事法廷の改善策とその提案の理由を述べ、「われわれの確固たる価値観を維持しつつ、米国を防衛するための最善策」と語った。「これらの改善で特別軍事法廷は、法の支配に従う、合法な訴追機関として再開する」

 オバマ氏は、1月に大統領就任後、グアンタナモ特別軍事法廷が機能していないとして、見直しが終わるまで訴追手続きを中断するよう指示していた。しかし、改善を行った上で再開させることについては、全く述べていない。一方、前年、当時大統領候補だったオバマ氏は、特別軍事法廷が「途方もない失敗」と語っていた。

 オバマ大統領は、改善策の導入のため、国防総省が、訴追手続き中止の期間延期を求めることになると述べた。

 オバマ氏は、特別軍事法廷が「正しく設計され適正に運営されている限り、戦争法規に違反した敵性戦闘員を裁くために適切である」と語った。

■改善策とは

 特別軍事法廷に対しては、いくつかの大きな修正が行われる。

 米中央情報局(Central Intelligence AgencyCIA)の「残忍で非人道的で恥ずべき」尋問手法で得られた供述は、証拠として今後は採用しない。

 伝聞情報の提供者は、今後は信頼性を証明しなければならない。ブッシュ前政権下では、伝聞情報に反論する側が証明しなければならなかった。

 さらに、被告は弁護人をより自由に選べるようになり、証言を拒否する場合の被告の保護も強化される。

 また、特別軍事法廷に裁判管轄権が認められるようになる。

 ブッシュ前政権の「テロとの戦争」の残虐行為の代名詞として世界的に知られるグアンタナモ基地には、国防総省によると、現在も30か国の容疑者241人が拘束されている。(c)AFP/Stephen Collinson