【5月15日 AFP】ミャンマーの民主化指導者アウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)さん(63)が自宅軟禁の条件に違反したとして起訴された問題で、訴追原因となった謎の米国人男性の身元について、ミャンマーおよび米国のメディアは、ミズーリ(Missouri)州出身のジョン・ウィリアム・イエットー(John William Yettaw)さん(53)だと報じている。

 これらの報道によれば、イエットーさんはベトナム戦争に従軍した退役軍人で、子どもが7人おり、ドン・キホーテ的な世界観の持ち主だという。

■湖を泳いで侵入、2日滞在

 ミャンマーの国営新聞「ミャンマーの新しい灯(New Light of Myanmar)」によると、イエットーさんは今月2日、観光ビザで入国しヤンゴン(Yangon)に到着。翌日の夜に湖を泳いで渡り、スー・チーさん宅に密かに侵入した。2日間をスー・チーさん宅で過ごした後、夜明けに泳いで帰ろうとしたところを警備中の警官らに発見・拘束された。

 当局はイエットーさんのパスポート、黒いショルダーバッグ、懐中電灯、ペンチ、カメラ、100米ドル紙幣2枚とミャンマー紙幣数枚などを押収したとしている。

 スー・チーさんの弁護士によると、スー・チーさんはイエットーさんに立ち去るよう求めたが、同情も示したという。

■英雄か、愚か者か?

 イエットーさんは、湖を泳いで渡るため自家製の足ひれを付け、実行前に自分の写真を撮っていた。報道によれば、タイの亡命ミャンマー人団体に対し、「英雄について書かれた社会奉仕活動の本の教えに従って行動している」と語っていたといい、「一風変わった人柄で、単独で行動していた」という。

 しかし、スー・チーさんの弁護士は、「(スー・チーさんの訴追は)彼の責任だ。彼は愚か者だ」と一蹴。反軍政派の新聞イラワジ(Irrawady)も、イエットーさんを「ストーカー」と評し、ミャンマーの民主化運動にかえって害悪となる欧米活動家がまた現れたと報じた。

 米国のミャンマー民主化団体も、「計画を見直して実行した結果どうなるかを考えていない」と酷評した。

■ベトナム帰還兵で子だくさん

 ミャンマーからの報道によると、イエットーさんはミズーリ州の小さな村ファルコン(Falcon)の出身で、心理学を学んでいた。

 また、10代の若者の交通事故死に関する情報を掲載しているウェブサイトOperation Stopによれば、イエットーさんには現在の結婚と前の結婚で生まれた子どもが計8人おり、そのうちの1人は2年前に交通事故死している。彼の一家は末日聖徒イエス・キリスト教会の信者という。
 
 一方、米メディアは、イエットーさんはベトナム退役軍人で、1975年にホーチミンが陥落した時、19歳前後だったと報じている。(c)AFP