【4月23日 AFP】現地当局者や目撃者によると、アフガニスタンの旧支配勢力であるイスラム原理主義組織タリバン(Taliban)の武装勢力が23日、パキスタンの首都イスラマバードの北西約100キロのブネル(Buner)地区を支配下に置き、通りや市場を巡回している。

 ブネル地区に進入したタリバンの戦闘員数百人は検問所を設置し、モスクを占拠している。国際社会の懸念をあおり、核兵器保有国パキスタンに米政府が言う「致命的脅威」を与えつつある。

 パキスタン北西辺境州(North West Frontier Province)のブネル地区はイスラマバードからも、また同州スワト渓谷(Swat Valley)からも110キロほどの中間地点に位置する。アシフ・アリ・ザルダリ(Asif Ali Zardari)大統領が前週、イスラム原理主義勢力の政府に対する武装闘争を終結させる目的で、同州の一部にイスラム法(シャリア)の導入を認める和平協定に調印したのがこの地だった。

 現地の警察幹部によると、ブネルでのタリバンの武装解除を求め、同州政府当局とタリバン側が協議中だという。

 タリバンのある司令官は、同州スワト地区にすでに設置したのと同様、シャリアに厳格に基づいたイスラム法廷を設置するが、警察活動には介入しないと述べた。

 スワト渓谷は、以前はパキスタンが誇るスキーリゾート地だったが、シャリア強化を目指した原理主義勢力による2年の武装闘争の後、中央政府は周辺での支配力を失った。中央政府は武力衝突を終結させるために、同渓谷が含まれる人口300万人の北西辺境州マラカンド(Malakand)地域にイスラム法廷の設置を認めた。

 ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)米国務長官は前日、タリバンの勢力拡大がパキスタンに「致命的脅威」を与えていると述べ、世界中のパキスタン人に先の和平協定に反対するよう呼び掛けた。(c)AFP