【4月16日 AFP】米国国内の右派過激派が、米経済の悪化や米国初の黒人大統領の誕生といった出来事を利用して新メンバーを勧誘していると警告する報告書を、米国土安全保障省(US Department of Homeland Security)が捜査当局にあてて出していたことが明らかになった。

 この報告書は、国土安全保障省が7日に地方捜査当局あてに出した機密書類で、米シンクタンク「全米科学者連盟(Federation of American ScientistsFAS)」の「政府機密に関するプロジェクト(Project on Government Secrecy)」が入手し、ウェブサイトで公開した。報告書には、メディアへの発表を禁止することが明記されていた。

 報告書の中で、国土安全保障省は、銃規制が実施される可能性や、イラクとアフガニスタンから問題を抱えた帰還兵が米国に戻ってくることなどへの恐れから、「暴力攻撃を実行可能なテロリスト組織や単独行動の過激主義者の出現につながる可能性がある」と警告した。

 しかし、今のところこれらの脅威は「主として言葉の上のもの」であって、「実際の襲撃計画の段階までは、まだ発展していない」とした。

 国土安全保障省は、「米国内の右派テロリストが現在、暴力行為を準備しているという具体的な情報はないが、右翼過激派は新メンバーを獲得している可能性があり」、その新メンバーがいずれ攻撃を行う危険性はあると報告書で述べた。「景気の悪化と、史上初の黒人の米国大統領の誕生が、右派の過激化と新メンバー勧誘の推進力になっている」

 報告書は、地方捜査当局の「主な懸念」は、将来銃規制が行われる可能性があることを恐れた「右派過激派による武器と弾薬の大量購入と備蓄」であると警告。活動中の右派過激派グループの具体名は挙げなかったが、168人が死亡した米退役軍人のティモシー・マクベイ(Timothy McVeigh)による1995年のオクラホマシティー(Oklahoma City)連邦ビル爆破事件を引き合いに出した。マクベイにはのちに死刑が執行された。

 右派過激派は、オクラホマシティー連邦ビル爆破事件後に政府の監視が強化されたことと経済成長の影響で、一時勢いを失っていた。しかし近年、「1990年代と似た雰囲気ではあるものの、単独行動や小規模組織による脅威は、過去数年よりも増している」

 過激派の中には、バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領が、不法滞在の移民に米市民権を与えるような入国管理制度の改革や、マイノリティーへの社会保障制度の拡大、銃の規制強化などを支持しているとみられていることを利用して、メンバーの勧誘や過激化を図っているグループもあるという。

 さらに、インターネット利用者の爆発的な拡大によって、過激派が爆弾を作る方法や銃器の訓練を知り、また、似たような考えを持つ視聴者へとメッセージを届けられるようになったと報告書は警告した。

 国土安全保障省は、9.11米同時多発テロを受けて設立された。同省は、報告書についてのコメントを拒否した。(c)AFP