【4月13日 AFP】前週タイではタクシン・シナワット(Thaksin Shinawatra)元首相派のデモが激化し、東南アジア諸国連合(Association of Southeast Asian NationsASEAN)の一連の会議が全面的に中止に追い込まれた。アピシット・ウェチャチワ(Abhisit Vejjajiva)首相は12日、バンコクと周辺地域に非常事態宣言を発令、タイの国際的信用は失墜した。専門家らは、今回の政情不安は今後数年間、尾を引くだろうと予見する。

 タクシン元首相を支持する赤いシャツを着用した反政府派のデモ隊が、ASEANプラス3(日中韓)首脳会議のメーン会場ホテルに乱入したのは11日。一連の会議は中止を余儀なくされ、タイの政治的混乱は再び国際社会のスポットライトを浴びた。
 
 デモは12日にさらに激化。首都バンコク(Bangkok)市街には軍の戦車が出動した。その光景はタクシン元首相を追放した06年の無血クーデターを思い起こさせた。そのクーデターから3年、タイの政情は安定するどころかさらに混乱を極めている。
 
 バンコクのタマサート大学(Thammasat University)の専門家Somchai Phagaphasvivat氏は「今回のサミット中止によって、タイ社会内の亀裂が深まるだろう。今後数年間、タイは分断され、政情不安が続く。誰でも指導者になる可能性がある。軍事政権でさえも」と予測する。

 この亀裂の中心にいるのが、タクシン元首相だ。汚職で禁固刑を下され、収監を逃れるために国外にいるが、いまだ影響力を持ち、ASEANサミットを中止に追い込んだ「赤シャツ」のデモ隊のように、貧困層を中心に根強い支持基盤がある。

 その対極に構えるのが、一般的には「黄色シャツ」で知られ、現アピシット政権を支持する強力な反タクシン派だ。王室周辺や軍、官僚などの支援で基盤を固めている。

 約1年の間で4人目の首相となったアピシット首相だが、批評家らは、首相個人の任期の行方よりも、混乱をきっぱりと止め、安定を回復する長期的解決手段を見出す必要があるという。そうした解決法を見出せなければ、外国資本も観光客もタイに寄り付かなくなり、急速な景気後退に見舞われている経済をさらに痛めつけ、その結果がさらなる国内対立をもたらすと、専門家らは懸念している。(c)AFP/Danny Kemp