【3月3日 AFP】(一部更新)前週、チベット人僧侶らによる抗議行動があった中国・四川(Sichuan)省アバ(Aba)県では、1959年3月の「チベット動乱」から50年目が近づくなか、寺院周辺で厳重な警戒態勢が敷かれている。チベット支援団体などが2日、明らかにした。

 米国を拠点とする「チベットのための国際キャンペーン」(International Campaign for TibetICT)が現地からの情報として伝えたところによると、数百人の僧侶が1日、仏教の祈祷を行う伝統行事を当局から禁じられたことに抗議してデモ行進を行ったという。僧侶らは、当局に拘束されているチベット人の解放も要求した。

 ICTによるとデモ行進を終えた僧侶らは寺院に戻ったが、その後は武装警察が寺院を包囲し、僧侶らはほぼ軟禁状態にあるという。しかし、詳細は明らかになっていない。

 この抗議行動については、米ニューヨーク(New York)を拠点とする学生による支援組織「自由チベット学生運動(Students For A Free Tibet)」も報告している。これによると、僧侶らは寺院から外に向かおうとしたが、300人から400人の兵士に押しとどめられたという。現在寺院は封鎖され、主な道路には多数の兵士の姿が見られるという。

■政府、焼身自殺図った僧侶の銃撃を否定

 このほか同県では前月27日、チベット仏教寺院「キルティ(Kirti)・ゴンパ」(格爾登寺)の20代の僧侶が、中国のチベット支配に抗議し、自ら油をかぶり体に火をつけ、焼身自殺を図ったと報じられていた。

 英ロンドン(London)を拠点とする人権団体「フリー・チベット・キャンペーン(Free Tibet Campaign)」によると、この僧侶は20代後半で、油をかぶって自らに火を着けた直後、警官に銃で撃たれたという。

 一方、中国の国営新華社(Xinhua)通信によると、中国政府は2日、警官による発砲を否定する声明を出した。これによると、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ(Dalai Lama)14世の肖像とチベット独立の象徴である「雪山獅子旗」を抱えた僧侶が体に火を着けたが、警官がすぐに消火し、僧侶は病院に運ばれ、現在、容体は安定している。僧侶の年齢は24歳、名前はターシ(Tashi)、チベット語ではタペイ(Tapey)だとしている。

■チベット人居住地区で緊張高まる

 今月10日はダライ・ラマ14世がインドに亡命するきっかけとなった1959年の「チベット動乱」から50年目にあたることに加え、14日はチベット自治区で前年起きた大規模な騒乱から1年目となることから、チベット自治区やチベット人居住地区では緊張が高まっている。

 アバ県などのチベット人居住地区では厳しい情報統制が敷かれており、独自の情報を得ること極めて困難になっている。旅行業者がAFP記者に語ったところによると、チベット自治区では3月、海外からの旅行者や外国メディアの立ち入りは禁じられている。(c)AFP/Robert J. Saiget