【2月2日 AFP】国際的な金融危機のさなか、バラク・オバマ(Barack Obama)新米大統領率いる米政権が発足し、米中関係には新たな緊張が生まれているが、専門家らは両政府が今後、協力して差異を乗り越えていくものとみている。

■貿易、人権問題では前政権より強硬姿勢

 観測筋が一致するのは、ブッシュ前政権に比べてオバマ政権のほうが中国に対し、通商摩擦と人権問題では強硬姿勢を取るだろうという点だ。

 香港バプティスト大学(Hong Kong Baptist University)のジャン・ピエール・セバスチャン(Jean-Pierre Cabestan)教授は「人権問題やとりわけ貿易問題において(米中関係は)時に以前よりも困難な方向へ進んでいることを、中国政府は認識している」と言う。「いつの経済危機でも常に保護主義的な傾向が出てくる。米国人の雇用保護に関しては、(米民主党は)前政権よりも力を入れるだろう。ゆえに摩擦も起こるだろう」

 オバマ大統領が中国の胡錦濤(Hu Jintao)国家主席とようやく電話会談を行ったのは、就任11日目の前週30日だった。この会談中にオバマ氏は米国の巨大な対中貿易赤字について触れたとみられる。会談後、ロバート・ギブズ(Robert Gibbs)大統領報道官はオバマ氏からの発言内容として「国際的な経済成長を刺激し、金融市場の流動性を高める必要と同時に、世界の貿易不均衡を是正する必要性を強調した」と述べた。

■オバマ政権前進とともに緊密な関係へ

 しかし、フランス国立パリ政治学院(Paris Institute of Political StudiesSciences Po)アジアセンター(Asia Centre)のジャン・フランソワ・ディメグリオ(Jean-Francois Di Meglio)副所長は、米中関係の現在の状態はよくあることだと観測する。「今回の民主党政権の発足時点で、われわれが身を置いていたのは古典的な状況だ。米中関係の最良期ではないが、これから改善するだろう」

 ディメグリオ氏は、まるで米政府が中国政府に「見ての通りわが国はタフになったのだから、いくつかの課題で一致できれば悪くないでしょう」と伝えているかのようだと述べた。

 一方で、2国間関係強化を予想させる兆候も出ている。08年、北京(Beijing)では新米国大使館が開設され、世界で2番目に大きい米大使館となった。また中国側は、駐米大使経験のある楊潔チ(Yang Jiechi)氏が現在外相を務めている。

 中国が存在感をさらに増し、北朝鮮問題からイランの核問題、地球温暖化抑制までオバマ政権が優先する課題への影響力も強まるにつれ、中国との対話はますます必須となりつつある。

 国際金融市場の崩壊で示されたように、世界1位と3位の経済大国の運命は分かちがたく結ばれている。(c)AFP/Pascale Trouillaud