【12月13日 AFP】歴史地区の再開発を進めるオランダの首都アムステルダム(Amsterdam)市は今月6日、増加する犯罪対策の一環として「飾り窓」として知られる合法売春地区や「大麻カフェ」の半減計画を打ち出した。

 同市議会が発表した行動計画によると「目標は(市中心部を)もっと安全で美しい生き生きとした地域に変えること」で、アムステルダム「名物」とされる「飾り窓」地区とその周辺の美化が提案された。

■リベラルな伝統に規制強化の傾向のオランダ

 これに先立ちオランダでは全国で幻覚作用を持つ「マジック・マッシュルーム」が禁止され、またいくつかの都市では、カフェの閉店計画も挙がっている。オランダのカフェは現在、5グラム以下ならば大麻を販売することができるが昨今、売春やソフトドラッグの使用について伝統的に「リベラル」なオランダの風潮に対し、規制を強化しようという動きが強まっている。

 しかし、アムステルダム市議会の計画書は「それらが一帯を独占することはなくなるだろうが、まったく消えてなくなることはない」と、性産業やカフェでの麻薬使用に、完全に歯止めがかかることはないと指摘している。10年間で計画をすべて実行しても、現存する「飾り窓」482軒のうち約240軒が残るだろうと試算している。

 オランダで売春が合法化されたのは2000年で、アムステルダムのLodewijk Asscher副市長は「(禁止よりも)規制のほうがよい解決法だとは、われわれは今も思っているが、それにしても産業が大きくなり過ぎるのを見過ごしてしまった。今回のような軌道修正は必要だ」と言う。

 大麻販売のライセンスを持つカフェについては、市当局では現在の76軒の半数まで減らしたい方針だ。オランダで5グラム以下の大麻の使用と所持が合法化されたのは1976年。ただし栽培は依然として違法だ。

■「飾り窓は観光資源」、市議会も公認

 カフェや売春地区、ソフトドラッグを販売している売店、ポルノ・ショップや風俗店などは犯罪の温床となっており、マネーロンダリング(資金洗浄)を隠ぺいする役割を果たしているものもあると、計画書では非難している。

「飾り窓」地区が、寛容で自由な都市というアムステルダムのイメージづくりに貢献し、観光客を招き寄せている点は市議会も「この地区の独自性を保つことは重要」と計画書で認めている。しかし「寛容と自由とは、無関心であることではない」という立場だ。

 さらに「水準の低い経済活動と犯罪に反応しやすい業種」が目立つようになり、街のバランスが崩れ始め、さらに犯罪的要素を招くという悪循環で、アムステルダムの経済や生活水準が影響を受け始めているともいう。 

 市の計画では「飾り窓」地区を、居住用ビルとオフィスビルの混合バランスを保って残し、「洗練されながらも陰のある」ナイトライフで活気づく街にしたい意向だ。

 Asscher副市長によると、再開発には数億ユーロがかかる見込みだが、市議会では民間からの投資に期待をかけている。現在、売春宿として営業している建物を特定し、オフィスや居住スペース、ギャラリーなどに改築するためには、最高5000万ユーロ(約60億円)程度がかかるとみられる。「民間企業の関心は非常に高い。ただし、現在の経済状況がわれわれの計画にどの程度影響を及ぼすか、よく見守っていく必要がある」(Asscher副市長)

 市議会では市民に公開して意見を募った後に計画を最終決定する。(c)AFP/Mariette le Roux